「日露の文化交流の質は失われていない」 国葬に参列したロシアの国際文化協力担当大統領特別代表のインタビュー

安倍晋三元首相の国葬に参列したロシアの国際文化協力担当大統領特別代表のミハイル・シュヴィトコイ氏はロシアの記者団に対し「日露の交流の質は失われていない」と述べた。また、シュヴィトコイ氏は、安倍首相の下で日露の文化関係がどのように変化したのか、文化交流で現在どのような計画があるのか、なぜ「ロシア文化のキャンセルは不可能なのか」についても語った。
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文化交流:ウクライナでの特別軍事作戦の開始よりもパンデミックの方が影響は大きかった

シュヴィトコイ氏は「文化交流は、安倍元首相の時代に、あきらかに活発になった」と語り、両国首脳のイニシアチブで行われた『ロシアの季節』や日露交流年は、両国民の関係が新たな高みに達したことを示す「極めて重要なしるし」だった言う。同氏はまた、「文化面で日露関係が落ち込んだとは思っていない」とも語った。
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シュヴィトコイ氏:「文化交流の分野では、ロシアと日本の関係は、他のどの分野よりも良好です。日露の文化交流の質は失われていません。ウクライナでの特別軍事作戦の開始よりも、パンデミックの方が影響は甚大でした。日本の対ロシア制裁があっても、アンチ・ロシアのレトリックがあっても、文化交流は従前通りのレベルを保っています。今は極めて深刻な政治危機ではありますが、日本人のセンチメントがアンチ・ロシアだとは思いません。」
それを裏付けるかたちで、シュヴィトコイ氏は今年の残り3ヶ月と来年に予定されている文化イベントのリストを記者団に披露した。今回のシュヴィトコイ氏の来日は、安倍元首相の国葬に参列することだけでなく、上記以外の文化イベントの可能性を日本側と話し合うことも目的である。
シュヴィトコイ氏はまた、「ロシアにおける日本の文化的プレゼンスを維持することも重要だ」と強調した。一方で、物価の上昇や送金の問題、パンデミック後の物流問題など、両国での文化イベントの開催には多くの困難があることも認めた。それでも『日本におけるロシア文化フェスティバル』に関しては、日本とロシアの間で「今も安定した関係が保たれている」とシュヴィトコイ氏は語った。

「ロシア文化は世界の文化の重要な一部であり、ロシア文化をキャンセルすることは不可能」

とはいえ、日露の文化交流に政治の影響はあるのか。それを問うた記者の質問に、シュヴィトコイ氏は「文化や芸術は政治より上にある」と答えた。
シュヴィトコイ氏:「国家間のコミュニケーションが政治だとすると、国民間のコミュニケーションは文化です。つまり、文化に大きく依存しています。国民間の関係は長期的なプロセスであり、だからこそ戦略なのです。一方で、政治は中期的なプロセスです。政治は非常に変動が大きく、それに比べると、文化交流はより安定しています。
(パンデミックにより多くの交流が断たれたことで)あらゆることを再構築しなければならなくなっています。日露の政治関係は深い危機にありますが、私たちは文化・経済の交流を通じて生き延びていきます。これは昔からそうでしたし、今後も変わらないと思います。地理条件を変えること、キャンセルすることはできません。地理条件をキャンセルできると思っている人がいるようですが、地球はひとつしかないのです。ですから、地理条件は宿命であり、どうすることもできないのです」。
シュヴィトコイ氏はまた、「日本人はドストエフスキーやチェーホフ、トルストイを深く理解できる数少ない国の一つだ」とも話した。
さらに、シュヴィトコイ氏は「どんな政治的状況にあっても、ロシア文化をキャンセルすることは不可能だ」と強調した。
シュヴィトコイ氏:「ロシア文化のキャンセル問題にこだわる必要はありません。なぜなら、ロシア文化をキャンセルすることは不可能だからです。そんなことは火を見るより明らかです。文字通り、あと2カ月もすれば、スカラ座のシーズンは『ボリス・ゴドゥノフ』の上演で始まります。ロシアの音楽家、ロシアのダンサー、ロシアの監督たちは、いずれにせよさまざまな舞台で活躍するのです。彼らは外国でも仕事ができ、国内に戻ってくる人たちです。ロシアには完成された文化があります。ロシア文化は世界の文化に有機的に組み込まれており、すでに切り離せないものとなっています。リルケの言葉を引用しましょう。彼は、ほかの国々は山や海に接しているが、ロシアは神に接していると書いています。ロシア文化のキャンセルを語ることなど不可能ですし、馬鹿げてさえいます。」
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