海洋や河川のプラスチック汚染は、生態系に悪影響を及ぼす大きな問題だ。プラスチックは自然の条件下ではほとんど分解されることがなく、環境汚染を招く。「海洋プラスチックごみ」「マイクロプラスチック」とも呼ばれる水中のプラスチック粒子を動物が食べれば、体内に蓄積され健康問題を引き起こす。ほとんどの海の生き物はプラスチックといつもの餌を見分けらず、体内に入れた際に何らかのフィルターがあるわけでもない。
米スタンフォード大学のジェレミー・ゴールドボーゲン博士らの研究チームは、クジラが実際にどれくらいのプラスチック粒子を飲み込んでいるのかを調べることにした。ヒゲクジラ類はフィルターの役割を果たす網のようなヒゲを通して水を飲み込み、食料を体内に取り入れることが知られている。研究ではクジラの生息地と、海洋プラスチックごみの分布図を重ね合わせ、クジラの潜水深度や餌を食べる時間なども考慮してデータを算出した。
ゴールドボーゲン博士らは、主にプランクトンを食べるシロナガスクジラやナガスクジラなどのヒゲクジラ類や、雑食性で魚も食べる歯のあるクジラなど約200頭を追跡調査。その結果、種類に関わらずプラスチック粒子を大量に摂取していることが明らかになった。
大型のヒゲクジラ類だと、1日で1000万ものプラスチック粒子を飲み込んでいる計算になるというから驚きだ。また、歯のあるクジラも1日あたり50万ものプラスチック粒子をプランクトンや小魚とともに接種しているという。こうした大量のプラスチック接種は、クジラの健康に悪影響を及ぼす危険性があるという。
クジラをめぐっては9月、オーストラリア南部の離島タスマニアの海岸で約230頭のクジラが漂着しているのが発見され、その大半は次の日までに死んだ。また、10月にもニュージーランドの離島に大量のクジラが打ち上げられて最大500頭が死亡している。クジラが大量に座礁する原因は完全には明らかになっていないが、一部の学者は、餌をとるために海岸に近づきすぎた群れが道に迷うことで発生すると考えている。
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