同紙によると、スナク氏の両親はインドではなく東アフリカ・ウガンダのイディ・アミン独裁政権(71~79年)から逃れて英国にやってきた。それでも祖先がインド系であることは間違いはなく、首相就任後にすでにインドの2つの大きな政治的陣営の共鳴を獲得することに成功している。
1つ目はナレンドラ・モディ首相の支持層にあたる巨大なヒンドゥー教ナショナリスト運動だ。この勢力はスナク氏の首相就任をインド人の大勝利として称賛している。また、スナク氏はこれまで行われた与党・保守党の党首選の最中に、ヒンドゥー教徒であることを公言しており、自らを「誇り高きインド人」と呼んでいる。
第2に、スナク氏はインドのリベラリストや左派勢力も味方につけている。彼らは英国内ではマイノリティであるインド系の代表者を、最も影響力のあるポストに就任させたことに対し、英国を褒めちぎっている。一方でこれを引き合いに出して、インドでは急激な右傾化が進んでいると、政権批判の材料として利用する動きもある。左派の人々はインドでは人種的、宗教的マイノリティが「二級市民」として、これまで以上に差別や迫害の的となっていると声を挙げている。
一方、モディ首相はスナク氏を「生きた架け橋」と呼び、英印関係を友好的なパートナー関係に発展させることに期待を寄せる。気候や貿易、保健衛生、防衛、教育など様々な分野での交流を念頭に置く。だが、欧州の専門家らの間では、スナク首相が旧植民地諸国との関係を再構築し、「グローバルな英国」を実現できるかはまだ不透明だとする見方も強いという。
スナク氏は10月25日、経済政策の失態で史上最も短い在任期間で退陣した「50日宰相」のリズ・トラス前首相の後任として、英国首相になった。
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