スウェーデンとフィンランドは5月、ウクライナ情勢を受けNATO加盟を申請。だが、エルドアン大統領は、2国がトルコの反政府テロを支援しているなどとして拙速な加盟に待ったをかけた。
新たなNATO加盟には既存の全加盟国の承認が必要なため、トルコの同意が必須となっていた。6月にはNATOのストルテンベルグ事務総長の仲介のもと、北欧2国が反政府テロ組織を支援しないことを引き換えに、トルコが加盟を承認することで大筋合意していた。
クリステルソン首相は8日に行われた会談で「トルコはNATO加盟国のなかで、最もテロに苦しめられてきた国の一つだ。我々はトルコと交わした責務を全て果たすつもりだ」と述べた。エルドアン大統領も「スウェーデンの合意実行を心から願う。同盟関係の精神に適う具体的な措置を待っている」と応え、少なくとも表面上は協力的な姿勢をみせている。
懸案となっている反政府勢力は主にクルディスタン労働者党(PKK)とFETOの2つで、いずれもトルコ政府はテロ組織に指定している。PKKはトルコ、シリア、イラクにまたがって居住する少数民族クルド人の武装テロ組織。FETOは2016年のクーデター未遂事件の首謀者とされるイスラム指導者フェトフッラー・ギュレンを支持する組織として知られている。
この問題について、トルコ21世紀大学・対テロ戦研究センターのウナル・アタバイ所長は「トルコはスウェーデンとフィンランドのNATO加盟問題を自らの国益という三稜鏡(プリズム)を通して見ている」と指摘し、次のように語っている。
「もし北欧2国が国内の2組織を壊滅させるか、そうまでいかなくても活動を禁止する具体的な措置を取り法律レベルで明文化すれば、トルコ議会はNATO加盟を認めるでしょう」
だが、こうした措置を実行するのは簡単ではないという。スウェーデンが実際にトルコとの合意条項をどれほど守れるか、トルコ側がこの条件実現の効果性をどのように確認するのか。この問いは非常に重要な焦点になるとアタバイ所長は話す。また、スウェーデン社会がこうした法制化を支持するかも考慮に入れる必要があるという。
「スウェーデンには2000人以上のFETO構成員らが逃れており、トルコはそれらの大半、つまりFETOやPKKに影響力のある人々の受け渡しを求めています。一方で、スウェーデン側は様々な言い訳を使って時間を引き延ばしている。この点において加盟プロセスの『空転』が起こっているのです」
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