同誌によると、EUの心配事となっているのは、米国による脱炭素やクリーンエネルギー転換といった環境にやさしいとされるグリーンビジネスへの急進的措置だ。米政府は2023年1月1日から、グリーンビジネス振興のため、3690億ドル(約52兆円)規模の補助金や減税制度を導入する。
同誌は次のように説明している。
「欧州にとっての問題は、ワシントンがしようとしていることが、欧州から投資を吸い取り、米国製品を買わせるようなものとなっていることだ。対象が電気自動車までかかってくると、フランスやドイツといったEUの自動車大国が怒り狂うことになる」
実際に、ドイツ政権内部ではすでにパニックが起こっているという。ドイツはメルセデスやBMW、フォルクスワーゲンといった世界的な自動車メーカーが有名だ。今回の米国の政策は、大手メーカーがエネルギーの高騰を受けて国内から別の場所へと投資先を替えようと検討している最中に起こることになり、ドイツ政府にとっては非常に悪いタイミングということになる。
EUはなんとか米国との貿易戦争を避けたいと考えているが、補助金制度開始までは6週間しか残っておらず、米側も妥協の姿勢はみせていない。最悪の場合、ドナルド・トランプ前大統領時代の報復関税戦争に逆戻りする可能性もある。
ドイツ政府内では米国との直接的な関税戦争ではなく「プランB」を模索する動きもあるという。それは、自由貿易のタブーを犯し、政府の財源をEU内の産業振興のための補助金としてつぎ込み、違うフィールドでワシントンが進めるゲームを行う、いわば「補助金戦争」にもっていこうという考えだ。こうすることによって、ソーラーパネル、バッテリー、水素などの分野で自国産業の発展も望める。
米国とEUの間ではウクライナ支援をめぐり表向きは団結を強調しているものの、裏では不満が積み重なり、多方面でほころびが見え始めている。10月にはウクライナへの財政支援をめぐり、迅速な支援を求める米国と長期的なアプローチを進めるEUとの方針の違いが鮮明となっていた。
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