【視点】半導体競争に参戦する日本

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日本の大手テクノロジー会社や自動車関連企業など8社が提携し、新たな半導体製造会社「Rapidus(ラピダス)」を設立する。提携するのは、トヨタ、ソニー、NTT、ソフトバンク、キオクシア、デンソー、NEC、MUFG銀行で、次世代半導体の開発と製造に取り組む。日本政府は、700億円を助成金を出し、支援する計画である。この新たな日本の巨大企業が、地域や世界の市場における状況を変えることはできるのか、またインテルやサムスン、TSMCなど、他の主要プレーヤーたちの競争相手となることはできるのか。「スプートニク」が専門家らに話を聞いた。
半導体をめぐる状況は、現在、事実、芳しいものではない。というのも、世界における半導体の需要は急増している一方で、供給がますます難しくなってきているからである。そして世界は、食糧危機だけでなく、「半導体飢餓」の脅威に直面する可能性がある。
新型コロナウイルスによるパンデミックが猛威を振るう中、リモートワークに必要な機器の需要は数倍、増加した。しかし一方で、ロックダウンにより、世界の供給輸送が困難なものになり、世界的な半導体不足のリスクが生じることとなった。これに関連して、「インスタント・インヴェスト」社の金融市場・マクロ経済分析部門のアレクサンドル・チモフェーエフ部長は次のように述べている。
「半導体市場の状況は(経済への影響等意味で)現在、単純なものではありません。というのも、徐々に、新型コロナウイルスによるパンデミックの時のような不安定な状態に近づきつつあるからです。そこで、日本が独自に半導体の製造を行うようになれば、将来的に大きな優位性を得ることになります。しかし、今のところ、日本は強いポジションにはありません。しかも、日本は米中の『紛争』に左右されています。一方で、日本の経済には依然、強い部分もあります。大々的な製造を行うための、大規模な資金と十分な生産能力があります」
しかも、これまで日本の大企業は、半導体の開発や製造には特に注力してこず、アウトソーシングを行なっていた。また半導体の製造は、小さな企業に委ねられていた。主にそれは台湾や韓国にあり、それらの企業は年を経るにつれ、半導体分野でのリーダーとなった。
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一方、現在、(世界的な半導体不足を避けるために)必要なのは、根本的に新たなアプローチだとチモフェーエフ氏は指摘している。
「狭い専門に特化した企業の世界というのは過去のものになりつつあります。現在、何か一つの『製品』だけを製造することで世界の市場で成功を収めるチャンスはかなり低くなっています。トヨタ、ソニーなどの企業はそのことをよく理解しています。ですから、彼らの連携というのは、何よりも、経済における既存の標準的アプローチから脱却することを可能にする大々的な多角化への一歩となります。この標準的アプローチというのは、アジアの『プレーヤー』たちがよく使ってきたもので、ある大企業は自動車だけを作り、別の大企業は電化製品だけを作り、また銀行部門は個別に存在するというものです。しかし、現在、複数の企業が連携、協力し、共通した『製品』の開発、製造に向けて、それぞれの利点を活用するという経済へと移行しつつあります。つまり、合弁会社Rapidusの設立は、大きな成功に向けた新たな歴史です。トヨタは新たな工場を建設し、新たな製造を行う能力に優れています。ソニーは最近、市場での地位を失いつつありますが、それでも電化製品においては、依然、強さを持っています。ソフトバンクとMUFG銀行は、新たな合弁企業に経済力を与えることができます。この企業が半導体市場でリーダーになれるという保証はありませんが、台湾を今の立場から『動かす』力は十分にあるでしょう」
もしかすると、これらの企業が協力することで、さらに強くなる可能性もある。
Rapidusの設立までに、世界最大の半導体製造企業である台湾のTSMC(台湾積体電路製造)とソニーグループの企業がマイクロチップ製造の合弁企業を設立するということが明らかになっていた。
一方、日本のグローバルな計画には、かつて半導体産業が生まれた九州の「シリコンアイランド」がある。しかし、後に、同地域の半導体の製造は、その工場を海外に移したことから、削減されている。
現在、世界の半導体市場では、安定した成長が見られており、将来的にも発展しかないと見られている。一方で、半導体製造の主要企業(台湾のTSMC、韓国のサムスン)は、発注数の急激な増加を背景に、その需要を満たすことがすでに難しい状態となっている。日本は、今の時点では、国内需要を台湾、韓国、中国からの輸入でカバーしている。
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しかし、チモフェーエフ氏は、日本は今、自国で次世代半導体を製造するという革新的な道を進んでいく用意があるのだと指摘する。
「現在、日本では、政府管轄による新たなタイプの企業が参加したイノベーション管理が行われるようになってきています。それは、経済を具体的な部門に分け、そのそれぞれが個別のニッチを占めるのではなく、異なる分野の協力によって作られるものです。これまでも日本は一度ならず、世界を驚かせてきました。日本が自国と世界経済を助け、再び、世界を驚かせることになる可能性はあります。なぜなら、半導体の分野で多角化が行われないことは、誰にも有益でないからです。危機の主な原因は独占です。もし、その独占が台湾にあるなら、その地位をめぐる(米中関係の悪化を含め)あらゆるリスクが、世界の半導体危機につながる可能性があります。パンデミックの際に、半導体の供給が崩れたことで、世界の自動車製造業が一定期間ストップしたことは記憶に新しいところです」
あのような状況を繰り返したいと思う者はいない。チモフェーエフ氏は、日本の高い管理レベルは、すべてが成功に終わることを予想させると結論づけ、次のように付け加えている。
「日本における大規模な半導体製造企業の設立は、アジア太平洋地域における複数のプレーヤーにとって、一種の妥協となるでしょう。しかも、ライバル関係にある企業にとってです。中国は台湾以外に、『すぐ近くの』供給国を手にすることになります。米国も、『すべての卵を、中国との紛争が起きたときには空っぽになる台湾という1つのカゴに入れておく』ことはしたくないはずです」
もちろん台湾は、半導体の独占的な供給者としてのステータスを守りたいはずである。しかし、今の現実(不足のリスクが高まる)の中で、それは合目的的ではなく、理性的ではないのは明らかである。
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