【解説】電気料金値上げ、最終的に誰がそれを支払うのか?

東北電力は、政府に対し、家庭向けの電気料金のうち、契約者のおよそ8割を占める「規制料金」と呼ばれる料金プランについて、来年4月から平均で33%値上げすることを申請した(12月以降の全体の値上げ率は40%を超える可能性がある)。
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「スプートニク」は、消費価格の高騰や新たな税を鑑み、こうした出費が国民にとってどれだけの打撃になるのか、専門家に話を聞いた。東北電力のサイトで指導部は、(値上げ申請が承認された場合)こうした決定が顧客にとって大きな経済的負担となるものであることを認める立場を示している。そこで、東北電力はこのような状況になった経緯を説明しつつ(福島県沖地震による発電所の甚大な設備被害や燃料価格の高騰など)、このことを深くお詫びするとしている。

最大の被害を受けるビジネス

東北電力が一般の電力消費者に対して謝罪をしたことは特筆すべきことである。
一方、現在の状況下でもっとも苦しい立場に置かれるのは、何より企業自身であると指摘するのは、中国および現代アジア諸国研究所日本研究センターの上級研究員コンスタンチン・コルネーエフ氏である。コルネーエフ氏はさらに次のように述べている。

「東北電力の要求は必要に迫られたもので、予期せぬものではありません。というのも、エネルギー資源の価格の高騰とともに企業の出費も増え、それを補う必要があるからです。しかし、政府は電気料金の値上げ(最大33%)を許可し、一般消費者のために、国民の負担でこれを補填するという可能性は少ないでしょう。

しかも、日本人はそれでなくとも、これまで何度も、ありとあらゆる限りの場所で節電するよう要請されてきました。こうした状況を背景に、国民の不満は高まっており、それに伴い内閣支持率は低下しつつあります。そんなわけで、東北電力の要請はおそらく承認されないでしょう(あるいは部分的にしか承認されないでしょう)。

これは、特定の消費者グループの電気料金だけが値上がりするということを意味します。とりわけ、トヨタなどの自動車産業の大企業自身、そして大規模な生産が行われている商業施設やインフラ施設などに対する料金です。とはいえ、これらの消費者にとっての財政負担は、東北電力が要請している値上げが承認されなくても、かなり大きいものです」。

しかし、電力料金の値上げというのは、基本的に、多くの国にとって当たり前の状況となっている。日本も例外ではない。日本にも、複数の政府の補助プログラムがあり、多くの消費者グループに補助金が出されている。
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謝罪は最小限の出費で自らを救う

コンスタンチン・コルネーエフ氏は、それゆえ、現在の状況においては、国が補助金で企業の出費を補填してくれる補助制度が導入されることになるだろうと指摘している。

「補助金が直接、資金流入という形で行われるかもしれませんが、現状としてはその可能性としては低いでしょう。というのも、どんな国も、単に資金をばらまくということをあまり好まないからです。おそらく、導入されることにおなるのは、支払い猶予の延長や特恵税率などでしょう。これは政府にとって、もっとも受け入れやすいやり方だからです。

一方で、すべての消費者の電気料金を値上げするというのは、消費者価格全体が値上がりしているという現在の経済状況下で、国民の間でもっとも人気のないものです」。

経済へのリスク

しかしながら、(特定の部門や企業に対する特恵条件の設定や補助金の割り当てによって)大きくなる国家の財政負担は、国の経済にとってもきわめて大きな負担であり、リスクを伴う方法である。
「というのも、国の出費が財政赤字の拡大を招くからだ」とコルネーエフ氏は述べている。

「日本は普通、この赤字を国債の発行によって補填しています。普通、その期限は10年あるいは20年となっています。一方でこれは、6年連続で過去最大を更新している『国の借金』を増やすことになるのです」。

2021年会計年度末(2022年3月31日)の段階で、日本の債務額は、過去最高となり、前代未聞の1241兆円という額に達した。これは、近い将来、債務不履行となる可能性があるということである。読売新聞の記事によれば、国民1人あたりが約990万円の借金を背負っていことになる。
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緩和策は問題を引き伸ばしているだけで、問題の解決にはならない

一方、東北電力の政府に対する申請は、特別軍事作戦開始以降、燃料が高騰したことを受けて、大規模な電力会社が政府に対して行った初めての値上げ申請である。そして、同様の傾向が他の電力企業にも広がっていく可能性も除外できない。
このような状況を予期しつつ、政府はすでに2022年の補正予算案に、電気代の負担軽減策として、約2兆4870億円を計上している。しかしながら、エネルギー資源の価格は(対露制裁を背景に)長期にわたって、高騰する傾向が明確となっている。そこで、一時的な「激変緩和措置」は世界市場のエネルギー資源の「不足」を安定して解決するものではない。
一方で、EU(欧州連合)と同様、日本も現在、まさにこのことを必要としている。
もしこの問題を解決できなければ、電力に対する大規模な出費は、最終的に、一般消費者にも関わるものとなり、その収入や生活水準に大きな影響を与えることになる。

不穏な傾向:突然の訪問キャンセル

加えて、今月、日本とサウジアラビアの関係が「秘密のカーテン」で覆い隠された。中東は、常に、日本の消費者にとって信頼できるエネルギー資源の供給者であるとされてきた。
しかし11月、サウジアラビアの実権者であるムハンマド皇太子の来日が突然、中止され、それに続き、両国のビジネスフォーラムも中止となった。
しかしそんな中、皇太子は隣国の韓国を訪れ、両国はエネルギー分野における協力強化について合意している。
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