日本政府と沖縄県との長期にわたる対立もその理由の1つだ。意見の相違は、普天間基地の辺野古沿岸部への移設問題と関連している。住民は、この危険な米海兵隊普天間航空基地の移設を求めているが、日本政府は県内移設のみ可能という立場を堅持している。そしてこの問題は、最高裁までもつれ込んだ。
スプートニク通信は、最高裁の判決が沖縄の人たちの安全に有利に働く可能性が少しでもあるかどうかについて、専門家に意見を聞いた。
歴史学博士で東洋諸国研究所の教授を務めるアナトリー・コーシキン氏は、日本の当局は依然として米国の戦略的利益を優先しているため、彼らにとって「他人事」であるこの問題が沖縄の人たちにとって有利になるような結果になると期待できる要素は少ないとの見方を示している。
「普天間基地は、アジアにおける米国の極めて重要な軍事拠点だ。それは、中国をはじめとした近隣諸国に対応するためだけではない。世界中で起こりうる軍事行動に対応するためでもある。なぜなら基地には、地球上のあらゆる場所に迅速に展開できる上陸部隊もいるからだ。したがって、米軍が近い将来に沖縄から撤退することはない。これは事実上、米軍は決して沖縄から撤退しないことを意味している。一方、住民は、沖縄における軍事プレゼンスを少しでも縮小するようさらに積極的に求めるようになっている。それは、これが沖縄の人たちにネガティブな心理的圧力をかけているだけでなく、彼らの生活に現実的な脅威を生み出しているからだ」
沖縄の住民からは、低空飛行する航空機の騒音や、米軍基地での事故の危険性について苦情が相次いでいる。在日米軍基地の70.3%が沖縄県に集中している。なお、米国の統治下にあった沖縄が日本へ返還された1972年当時のこの割合は58.8%だった。
一方、日本政府は、基地の危険性を取り除くには、辺野古への移転が「唯一の解決策」だと考えている。コーシキン氏は、普天間基地の問題は「一滴の水」のようなものであり、日本領土における米国のプレゼンスという日本の基本的な問題を反映していると指摘している。
「住民は、沖縄における米軍部隊のプレゼンスに伴う困難にもはや耐えることができなくなってきている。しかし米国は、中国やその他のアジア諸国から至近距離に自分たちの基地を持ちたいと考えている。一方、沖縄の住民は基地を県内に移設するという提案に不満を抱いている。住民たちは、新基地のために海域を『埋め立てる』という案によって周辺の自然環境が大きく損なわれると考えている。しかし、これらの要因や沖縄の人々の危惧を米国は気にしていない。そして日本政府は自国の外交政策を米政府に依存している。米国の反中レトリックが厳しい現在は特にそうだ。岸田首相は時おり沖縄に『丁寧なお辞儀』をして、住民に米軍基地のプレゼンスの負担をなんとかして軽減すると約束している。しかし実際には、米国に『敬礼』している。したがって、基地の撤去案はまったく実行されていない。部分的にも実行されていないのだ。民主党が政権の座に就いたときには、この問題を解決または少なくとも解決に向けてスピードを上げようとする試みがあったが、ホワイトハウスは日本政府に圧力をかけるチャンスを得て、事実上、当時首相を務めていた鳩山由紀夫氏を辞任させることに成功した」
沖縄県の知事選挙では、県内の米軍基地の問題解決を約束する政治家の当選が続いているが、「普天間問題」は未だ解決に至っていない。そのため、最高裁もこの問題を抜本的に解決することはおそらくできないだろう。コーシキン氏は、北朝鮮のミサイル計画や、米国およびその同盟国と中国ならびにロシアとの関係悪化もあるため、米国はアジアにおける自国の軍事プレゼンスを弱めることができないばかりか、それは高まるばかりとなるだろうという見方を示している。
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