2022年の主要な出来事

【解説】「『黄金』は『暗黒』に転じた」 2022年の岸田政権の総括と今後の展望

岸田文雄氏が、第100代目というシンボリックな代の首相に就任したとき、多くの人々が多大なる期待を寄せた。長期にわたり高い支持率が維持されたことは、そのことを示す重要な証拠であった。しかしあれから一体何が変わってしまったのか。そして失われた国民の信頼を取り戻すチャンスはまだあるのだろうか?
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岸田政権を分けた「7・8事件」、「それまで」と「その後」

明治大学政治経済学部の西川伸一教授は、「岸田政権の1年間は、安倍元首相が銃撃された『7・8事件』事件の前と後で大きく分かれる」と指摘している。岸田首相は、就任当初、「丁寧で謙虚で、多様な意見に寛容な政治」、そして「聞く力」というスローガンで、コロナ禍に疲弊した社会の注目を集めた。
しかも、岸田首相は、「政治不信からの脱却」の重要性を強調し、中道左派的な経済政策において、不平等の解消の必要性を強調し、その中心を観光業からデジタル技術へ移行することを提唱した。
「令和版所得倍増」、「デジタル田園都市構想」、「新しい資本主義」といった構想はすべて、ポジティブな変化を渇望する世論の目に魅力的なものに映った。
今年1月には新型コロナの新規感染者数が記録的な数に達し、2月からはウクライナ問題に関する様々な経済問題が出始めたが、今年前半、岸田氏の支持率は高い水準を保ったままであった。
7月までの支持率はおよそ60%を維持したが、日本の歴史において、1978年以来、総理大臣が就任から9ヶ月にわたり支持率を50%以上に維持することができたのは、小泉内閣と第二次安倍内閣の2例しかない。
西川 伸一教授:「『7・8事件』前は安倍元首相の後見があって自民党内の保守派をグリップできて、そこそこ安定した党内ガバナンスと政権運営ができていたと思います。2021年の衆院選と2022年の参院選(これは銃撃事件直後になりますが)に勝利したことで、岸田首相は政権運営に自信を深めたことでしょう。その後3年間国政選挙がない『黄金の3年間』で岸田カラーを出せると意気込んでいたと推察します」。
しかし、西川氏は、「『7・8事件』後、次第に自民党と統一教会の密接な関係が明らかになるにつれて、『黄金』は『暗黒』に転じた」とも指摘している。
いわゆる統一教会の問題は安倍派のみならず、自民党全体の問題であることが露呈した。
岸田内閣は、8月に内閣改造を行うなどして、統一教会との関係を断とうとしたが、期待していたような結果は得られなかった。
また後に、教団と閣僚らの関係についてより詳細なことが明らかになった。
そしてその結果、10月の世論調査では、岸田首相が、統一教会の問題に関して、指導力を十分に発揮できなかったと答えた回答者は80%に達し、これが支持率低下の主な原因となった。
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加えて、国葬問題が持ち上がった。
世論調査では、当初は、国葬実施を支持すると答えた回答者が支持しないと答えた人の数を上回ったが、国葬を行う法的根拠、費用の問題、安倍首相と教団との関係の問題などが出てくるにつれ、反対者の数は半数を超えた。
そして年末には、岸田政権の支持率は25%にまで低下したのである。
西川氏:「会期末ぎりぎりで野党の要求を大幅にとりいれて、統一教会の被害者救済法をなんとか成立させ、財源の裏付けもないままに防衛費を倍増させる方針をぶちあげて、ようやく支持率は下げ止まったようです。とはいえ、支持率を大きく回復させる妙案はなく、当面は対外的脅威をあおって国民の目をそちらに向けて批判をかわすという、あまりに古典的な政治手法にすがることになるでしょう」。
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支持率を回復することはできるのか その後はどうなるのか

西川氏:「4月に統一地方選挙があります。それまでに支持率が上がらないと『岸田では選挙が戦えない』と岸田下ろしが始まります。岸田首相としては、防衛増税を争点とした総選挙で起死回生をはかることはおおいにあり得ると予想します。」
一方、ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センターの研究員で、歴史准博士のウラジーミル・ネリドフ氏は、岸田氏が支持率を取り戻すチャンスについてきわめて懐疑的な見方を示している。
ネリドフ氏:「統一教会をめぐるスキャンダル、また安倍元首相の国葬に関する複雑な問題で、岸田氏は、他のどの首相よりも多くの政治資本を自身の手中に集中させていた安倍元首相のような存在になることはできないということがはっきりしました。また在任期間においても安倍元首相の記録に追いつく、あるいは近づくことも不可能だと思われます。なぜなら岸田氏は世論や党内の意見にかなり左右されているからです。早かれ遅かれ(おそらく早期のうちに)、ネガティブな要素が勝り、辞任することになるでしょう」。
しかも、岸田首相の経済政策について、専門家らは現時点では大きな結果が出せるとは考えられないと指摘している。
ネリドフ氏:「『新資本主義』政策は、スローガンが非常にあいまいで、どんな内容にもできるという点で、アベノミクスに非常によく似ています。つまり、これだけで、絶対的に成功するとかしないと判断することはほとんど不可能なのです」。
西川氏:「政策については『新しい資本主義』などを唱えましたが、『7・8事件』以降はその『事後処理』と上記の閣僚人事、加えてインフレ対策に追われて、目新しい政策を打ち出すどころではなかったという印象をもっています。」
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