ウクライナ政府は2022年、ウクライナ正教会に対する大規模な取り締まりを開始した。政府はロシアとのつながりを理由にウクライナ正教会の活動禁止に関する決定を下した。ウクライナ保安庁は聖職者を次々と起訴し、強制捜査を各地の教会で展開している。
文書では、「わたしたちは露保安局の協力者でもなければ、職員でもない。悲しいことに、このようなやり方は、ウクライナ正教徒の一部の人々の士気喪失を招いている」と記されている。さらに請願書では、このような行動はウクライナ人の「不安定化」と「分裂」につながるものだとも指摘されている。
先にウクライナ保安庁はキエフ・ペチェールシク大修道院内で「鐘が鳴り渡り、ロシアの上に母なるルーシが目を覚ます、聖母がロシアを救う、母なるルーシが目を覚ます」という「ロシア支持」の歌が歌われていたとし、同大修道院、及び北西部ロブノ州の一部教会で「対情報作戦」を実施し、50人以上を拘束して尋問していた。
キエフ・ペチェールシク大修道院のパーヴェル府主教によると、儀礼を担当したザハリヤ神父は今後、教会内での活動が禁止されたとのこと。その後、府主教はウクライナ主義のサイト「平和維持軍」で懲罰の対象リストに掲載されたという。ウクライナ正教会は一部の聖職者に重罰を求刑する内容の起訴状が用意されているとし、懸念を示している。
キエフ・ペチェールシク大修道院はウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)の管理下にあるものの、5月に分離派のウクライナ正教会(2018年にウクライナ正教会からの独立を宣言)は大修道院の明け渡しを要求する声明を発表していた。ウクライナ正教会は分離派が保安庁を利用し、キエフ・ペチェールシク大修道院を自らの管理下に置こうとしていると懸念している。
分離派(新ウクライナ正教会)は2018年、ポロシェンコ元大統領の肝いりで設立された。伝統的なウクライナ正教会はモスクワ総主教庁の管理下にあったことから、これに対抗するものとして誕生した。2019年にコンスタンティノープル総主教庁は新ウクライナ正教会の独立を承認したものの、世界に15ある正教会の大半はその独立を認めておらず、コンスタンティノープル総主教庁の管理下にある団体と認識している。