ワシントンポスト紙は、月探査アルテミス計画は、宇宙の平和利用のためのルールと月面における行動規範を確立するもので、宇宙飛行士が負傷した場合の救急処置、アポロ11号着陸地点などの歴史的な地点の保護、科学データや計画の共有、宇宙ゴミについてのルールの遵守、パートナーの資源採取の「安全地帯」の尊重などが規定されていると報じている。この「安全地帯」の尊重の条項について専門家らは、将来的に、複数の国が同じ場所で同じ資源を奪い合う恐れが懸念されるため可能性があるためルールの規定が重要だと指摘している。例えば、すでに現時点で月の南極は米国と中国が領有権を握っている。
ワシントンポスト紙は、ここ数年、月への宇宙船の打ち上げの成功など、宇宙開発の進歩を誇る国が多くなったことを指摘している。ところが中国は技術を躍進的に突破させ、何十年も米国が保持してきたトップの座を占めるようになった。中国は2019年、史上初めて月の裏側への宇宙船の着陸に成功。2021年に果たした火星への探査機着陸は、これまで米国以外のどの国も成功させたことがなかった。国際宇宙ステーションが老朽化し、ステーションを主に使用している露米の関係が緊張化する一方で、中国は独自の宇宙ステーションを建設している。
米国は文字通り、中国に対して挑む月探査競争に他国を引き込んでいる。この理由についてワシントンポスト紙は、月開発において米国が単独で中国を打ち負かすことも、それより重要なのだが、米国流のルールを確立することも難しいことを理解しているからだと指摘している。だが、米国の公算では、数の上で十分な国が米国の提案する協定に署名し、米国が露中に先んじて月の到達すれば、露中は米国の確立したルールに従わざるをえない。
一方でワシントンポスト紙は、どの国が月面到達競争で勝利を収めるかが、まだ不明だと書いている。中国はすでに独自の宇宙ステーションを建設しており、月への有人飛行計画を進めている。ワシントンポスト紙は、中国はアルテミス計画には参画しておらず、規範厳守の義務はないため、これが理由となって月面での危険な紛争に発展する恐れを警告している。
中国人研究者が月面基地の原子炉による電気供給システムの確立に取り組んでいるニュースはリンクからお読みいただけます。
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