ロシアとの関係について言えば、領土問題をめぐり、ロシアが日本に対し、いかなる譲歩もせず、譲歩に関して交渉する可能性もないとする立場を明確にした2018年の末には、日本はロシアとの交渉に対する関心を失い始めていました。
まさにそのことから、日本政府は、2022年の状況において、2014年のときのように対露制裁への参加を拒み、ロシアの行動に対する強硬な発言を控える理由はもうないと考えたのです。本質としてこれは日本政府の中心派閥内で一致した立場であり、岸田首相の役割はそれほど大きくありません。
昨年のエネルギー価格の高騰は、この文脈において、コロナウイルスによるパンデミックの結果と国際紛争の激化を背景にした世界市場の混乱の結果と捉えられており、従って、日本がこのプロセスに何らかの影響を与える可能性、たとえばウクライナ情勢をめぐって親ロシア的立場を取るという方法によるなどは現実的なものとは思えません。
しかも日本は本質的に、日本企業が参加するサハリンの石油・ガスプロジェクトに関する制裁には加わっていません。日本政府はこれを拒否したのみならず、これらの日本企業に対し、プロジェクトから撤退しないよう勧告しています。ロシアの行動は『歴史が変わる瞬間』を意味するとした首相の言葉は、概して、効果的な文学的手法以上の何ものでもありません」。
「防衛費はGDPの1%という基準を見直し、その額を最大GDPの2%にまで増大していくという決定は、すでに2021年には明らかにされていたものです。昨年承認された予算案の防衛費の額は誰にとっても驚くようなものではなく、防衛費をGDPの2%レベルに増大するための5年計画の一歩です。昨年採択された自衛隊のための中期的な武器の調達計画も同様です。
今回新たに加えられた要素といえば、『国家安全保障戦略』の改訂版で、近年の現実を踏まえた国際情勢と日本の安全保障に対する脅威に対するより厳しい評価を与える形で、こうした動きの論拠が体系化されたことでしょう。ここで岸田首相は、とりわけ、世界的な軍備増強傾向や軍事分野での活発な動きを背景に、日本の防衛力を大幅に増大すべきであるという日本の政界の大部分の人々の考え方に従っています。問題はおそらく、増大する防衛費の財源をどうするかということでしょう。自民党内部では、法人増税などの増税によって確保するか、現在すでにG7諸国の中でも記録的な規模となっている国債で賄うかという議論が行われています。
岸田首相は、内閣総理大臣として、この問題における具体的な決断を迫られます。財政負担は大きくなりますが、経済活動に対する影響は危機的なものとは考えられていません」。