【視点】多国間関係を平和裡にマネージするよう呼びかける岸田首相

2022年、日本は2つの重要で困難な決定を下した。まず1つ目は対露政策の転換、2つ目は国家安全保障政策の変更である。これは、岸田文雄首相が米国訪問の際に、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院で演説した中で明らかにしたものである。また岸田首相は、外交には裏付けとなる防衛力が必要であるとの考えを示し、欧米諸国に自由と平和を守るために強く結束するよう呼びかけた。
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「スプートニク」は、世界経済国際関係研究所のアジア太平洋研究センター、日本経済政治グループのビタリー・シヴィトコ所長とともにこの演説を注意深く分析してみたい。
岸田首相は、「この2つの決定はいずれも、重大な影響をもたらす重い決断ではあったが、これらの決断が日本と世界のために正しい判断であったと信じている」と述べた。また首相は、ウクライナにおけるロシアの特別軍事作戦は、ポスト冷戦期の世界を完全に終わらせるものだったとも指摘した。これに関連し、日本は対ロシア政策を180度転換し、強硬な対露制裁を発動した。日本が発動した制限には、ウラジーミル・プーチン大統領とロシアの一連の主要な政治家に対するものも含まれている。
一方、これに対してロシア政府は日本との平和条約交渉を中断すると決定し、自らの制限を導入した。
2022年の主要な出来事
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岸田首相はさらに、日本はウクライナへの人道支援を最初に行なった国の一つであることについても言及した。
首相は、明らかに中国を意識し、「力による一方的な現状変更を許せば、アジアを始め世界のほかの場所でもこのようなことが行われてしまう。我々の自由と民主主義を守るために、日本は行動すべきである」と締めくくった。
岸田首相の発言は、予期せぬものでもなければ、センセーショナルなものでもない。ウクライナ危機に対する政府の立場を説明し、日本の防衛能力の増強路線について述べたに過ぎない。
これに関して、ビタリー・シヴィトコ氏は、しかも岸田氏は、例によって、政治路線による決定やその実現における個人的な役割をかなり誇張しているとの見方を示している。

ロシアとの関係について言えば、領土問題をめぐり、ロシアが日本に対し、いかなる譲歩もせず、譲歩に関して交渉する可能性もないとする立場を明確にした2018年の末には、日本はロシアとの交渉に対する関心を失い始めていました。

まさにそのことから、日本政府は、2022年の状況において、2014年のときのように対露制裁への参加を拒み、ロシアの行動に対する強硬な発言を控える理由はもうないと考えたのです。本質としてこれは日本政府の中心派閥内で一致した立場であり、岸田首相の役割はそれほど大きくありません。

昨年のエネルギー価格の高騰は、この文脈において、コロナウイルスによるパンデミックの結果と国際紛争の激化を背景にした世界市場の混乱の結果と捉えられており、従って、日本がこのプロセスに何らかの影響を与える可能性、たとえばウクライナ情勢をめぐって親ロシア的立場を取るという方法によるなどは現実的なものとは思えません。

しかも日本は本質的に、日本企業が参加するサハリンの石油・ガスプロジェクトに関する制裁には加わっていません。日本政府はこれを拒否したのみならず、これらの日本企業に対し、プロジェクトから撤退しないよう勧告しています。ロシアの行動は『歴史が変わる瞬間』を意味するとした首相の言葉は、概して、効果的な文学的手法以上の何ものでもありません」。

岸田首相は2つ目の重大な決断として、日本の安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画を見直し、国家安全保障政策を変更することを挙げ、防衛力強化のための具体策を明らかにした。
それはGDPの最大2%までの防衛費の増大、反撃能力の保有、サイバー安全保障分野における即応能力の拡大、日本の南西地域における防衛態勢の強化などである。
岸田首相は、こうした変更について、ロシア・ウクライナ紛争だけでなく、日本の周辺国や地域においても核ミサイル能力の強化、急激な軍備増強、力による一方的な現状変更の試みなどの動きがますます顕著になっているためだとしている。
加えて岸田首相は、戦後の日本の平和国家としての外交は変わらないとした上で、今起こっていることに対する現実を見据え、外交には裏付けとなる防衛力が必要だという結論に至ったと説明した。
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これについて、ビタリー・シヴィトコ氏は、日本の明確な防衛能力の増大は、第二次世界大戦敗戦後に日本に課せられた防衛分野における制限と自制の体制を崩すため、自民党の長期的な実践政策の転換を反映したものだと考えている。

「防衛費はGDPの1%という基準を見直し、その額を最大GDPの2%にまで増大していくという決定は、すでに2021年には明らかにされていたものです。昨年承認された予算案の防衛費の額は誰にとっても驚くようなものではなく、防衛費をGDPの2%レベルに増大するための5年計画の一歩です。昨年採択された自衛隊のための中期的な武器の調達計画も同様です。

今回新たに加えられた要素といえば、『国家安全保障戦略』の改訂版で、近年の現実を踏まえた国際情勢と日本の安全保障に対する脅威に対するより厳しい評価を与える形で、こうした動きの論拠が体系化されたことでしょう。ここで岸田首相は、とりわけ、世界的な軍備増強傾向や軍事分野での活発な動きを背景に、日本の防衛力を大幅に増大すべきであるという日本の政界の大部分の人々の考え方に従っています。問題はおそらく、増大する防衛費の財源をどうするかということでしょう。自民党内部では、法人増税などの増税によって確保するか、現在すでにG7諸国の中でも記録的な規模となっている国債で賄うかという議論が行われています。

岸田首相は、内閣総理大臣として、この問題における具体的な決断を迫られます。財政負担は大きくなりますが、経済活動に対する影響は危機的なものとは考えられていません」。

一方、中国との関係について、岸田首相は、日本は力による一方的な現状変更を防ぐべく最大限の努力をするとの姿勢を確認している。
岸田首相は、「その上で我々は中国と共にインド太平洋地域を含む国際社会の平和と安定に貢献することを希望しており、共通の課題については協力をしていく。つまり、関係を平和裡にマネージしていく必要がある。これが今の時代のステーツマンシップの成否を決める点だ」と語った。
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