火力
「テルミナートル」は戦車支援戦闘車である。この名称がジェームズ・キャメロン監督の有名な映画にちなんだものであることは明らかである。「テルミナートル」は、敵歩兵によるミサイルや擲弾を装備した対戦車の攻撃から戦車を援護するための車両である。敵歩兵は戦車を急襲しやすい場所に移動するために姿を変えている可能性があるが、「テルミナートル」はこれを発見し、殲滅するのである。
「テルミナートル」は戦車T90をベースに改良されたものである。一方、これを製造した「ウラルワゴン工場」は、戦車Т72、また旧式のT55をベースにしたものも開発している。この戦車の特徴は、かなり小型で、防衛システムで防御された砲塔は高さのない平たい形になっており、すべての兵器が弾薬と共に砲塔に装備されている。車両に砲弾が命中した場合でも、乗員が負傷することはなく、戦闘車は走行をつづけ、戦場に戻ることができる。戦車の主な武装は、30ミリ口径の機関砲2A42が2門、自動擲弾銃AGS−17が2門、対戦車ミサイル4門、7.62ミリ口径のPK機関銃となっている。30ミリ口径機関砲は強力な破壊力を持ち、正確な射撃ができることから、かつてはヘリコプターや装甲車で広く使用されていた。徹甲弾は1000メートルの距離から、最大27ミリまでの装甲を貫くことができる。つまり、中型までのあらゆる装甲車を貫通できるということである。
この機関砲の発射試験では、戦車Т55が砲撃されたが、3連射で、砲塔からすべての装備と照準器を吹き飛ばし、戦車砲を破損し、燃料タンクを爆破した。その後、レンガの壁に対する発射試験も行われたが、1連射で壁を破壊することができた。48.5グラムの火薬が入った破片榴弾は戦車、敵兵士を簡単に殲滅し、さらにはヘリコプターを撃ち落とすことができる。一方、AGS–17は、さまざまな戦争で多用された自動擲弾銃である。破片榴弾を用いたもので、1700メートルまで照準可能であり、また榴弾の殺傷半径は7メートルとなっている。また「テルミナートル」は、30ミリ機関砲の砲弾900発、AGS–17擲弾銃の銃弾600発、機関銃の弾薬2000発、9М120アターカ対戦車ミサイル4門、破片榴弾を備えている。「テルミナートル」は、敵歩兵に対し、最大射程4000メートルで斉射することができる。
森林を刈る「テルミナートル」
「テルミナートル」をめぐっては多くの議論があり、この戦闘車を否定する声もあった。しかし、実戦で使用されることですべてが解決した
ウクライナでは機甲戦は少ない。ロシア軍は主に、前もって建設した防衛拠点を利用して敵と戦っている。防衛拠点というのは、壁や堀、溝などで強化された場所であり、あらゆる方向からの攻撃から防衛できるものである。拠点は、城塞や施設があり、トーチカのような防御拠点も含んでいる。中隊の防衛拠点は前線に沿って最大1500メートル、最前線から1000メートルの場所にある。また拠点は、隣り合う拠点への砲撃を防衛できるような形で建設されている。
つまり、かなり強力な防衛拠点であり、これを陥落させるのは困難である。横からの攻撃は無効であり、砲撃で破壊するには時間もかかり、弾薬の消費も多くなる。
そこで、「テルミナートル」は拠点を破壊するという新たな用途を与えられた。
この拠点はドネツク州マケエフカの南部、戦線の北側に位置しており、ウクライナ軍のドネツク部隊に包囲されるのを避け、攻撃を強化するための突出した場所が作られている。
ウクライナ兵は深い森に位置する拠点から攻撃を試みた。ウクライナ軍には戦車があった。ウクライナ軍部隊は、ロシア軍の戦車とそれに随行していた「テルミナートル」を攻撃し始めたが、ウクライナの戦車は損傷を受け、のちに爆発した。そして「テルミナートル」は30ミリ機関砲とAGS–17で連射し、歩兵を殲滅した。無人機が撮影した動画では、弾薬が木々を刈っているのが分かる。「テルミナートル」は森に細い道を作ったのである。ウクライナの拠点で何かが燃え、逃走し、森の中に身を隠そうとした者たちの体が横たわっている。
ロシアの戦車兵らは、新型の戦闘車に満足している。というのも、ウクライナの兵士はこれを恐れているからだ。「テルミナートル」は彼らにいかなるチャンスも与えないのである。