中国のものと思われる偵察気球
同省によると、その気球は高高度監視気球というもので、アリューシャン列島からカナダを経由し、西部モンタナ州の上空に到達したという。メディアは、この気球が米国領土内の大陸間弾道ミサイルを保管するエリアの上空を飛行したと報じている。当局は、この偵察気球が中国のものであるとみている。
米国防総省は、気球の撃墜は行わなかった。その大きさから危険と判断したためだ。さらに、この気球は民間の航空機に脅威を与えるものではなく、また、中国が気球を通じて得ることのできる情報に関しても、中国にとって「大きな付加価値を生み出す」ものではない。そのため、この気球は危険なものではないという。
中国は憶測を避けるように促す
中国外交部の毛寧報道官は、詳細が判明するまでは「偵察気球」に関する憶測を避けるように求めた上で、「中国は責任ある国家であり、国際法に従って厳格に行動しており、他国の主権を侵害したり、領空を侵犯したりする意図はない」と強調した。
偶然にそうなった可能性も
モスクワにある世界経済国際関係研究所・国際安全保障センターに務めるドミトリー・ステファノビッチ研究員によれば、米軍側が偵察気球に対抗する有効な手段がないことを公にし、実際に認めたことは、現在の状況において興味深いことであると指摘している。
「長期的に見れば、アメリカ大陸における防空システムのあり方に変化が見られることになるかもしれない。(中略)しかし、対策という点ではかなり複雑なのだ。戦闘機や防空システムの兵器はもっと控えめな高度で使うように設計されており、そのような任務にミサイル防衛システムや宇宙防衛システムを使うのは合理的ではないし、ターゲティングにも問題があるかもしれない」
軍事専門家のドミトリー・ドロズデンコ氏はスプートニクに対し、この気球は確かに中国のものだが、研究目的で打ち上げられ、誤って米国領空に侵入した可能性があるとコメントしている。
「このような高度では気流はかなりのスピードになり、中国の気球をそこに 『吹き飛ばす』ことができたのだ。これは、商業的あるいは気象学的な研究において非常に有望だ」
また、中国が低軌道衛星を使って米国領土内の軍事目標を偵察することは十分可能であるとドロズデンコ氏は指摘している。
「環球時報」の元編集長の胡錫進氏は微博(中国のSNS)で、この気球事件は中国を攻撃するための策略だと指摘している。同氏は、気球は必ず発見されるものであるから、中国が米国を監視するために気球を打ち上げることはないとの見方を示している他、米モンタナ州の軍事施設は中国に脅威を与えるものではないと指摘している。
「モンタナ州はカナダから遠くない。この州は、農地と野生動物が生息する広大なエリアなのだ。確かに軍事基地はあるが、中国に対する脅威はそれほどではない。米西海岸や太平洋諸島の軍事施設とは異なるのだ。(中略)この気球がどこから来たのか、そしてその目的はまだ明らかになっていないが、米国の政治家が反中国的な憎悪を煽るための格好の手段になっている」
その後、米国上空に現れた気球は実際に中国から飛んできたものであり、科学研究に使用される民間の機器だという情報が報じられた。
中国外務省は、気球が米国領上空に現れたことについて、風が原因でルートから外れたとし、遺憾の意を表明した。