国家規模でついた大嘘
パウエル長官は国連安保理で、イラクの指導者サダム・フセイン氏の生物兵器製造技術に関する情報を得たと述べ、白い粉末の入った小瓶を見せた。これを見た多くの人が、粉はイラクが製造する大量破壊兵器のサンプルだと考えた。後日、これはCIAの誤報であったことが判明し、イラクでは生物兵器は発見されず、パウエル長官自身も「みんなを納得させるために偽の小瓶を見せた」と釈明した。
米国がついたこの嘘はイラクに大損害を与え(イラクは今もなお、その付けを支払っている)、米国のイラク軍事侵攻と国家としてのイラクの根本的破壊の出発点となったのである。
米国はパウエル長官が見せた小瓶の粉が偽物だったことについて、謝罪も懺悔もしなかった。それどころか、米国の中東破壊計画はその後も続けられた。それが米国がシリア、イエメン、リビアで起こした戦争である。
米国のイラクでの軍事作戦
米国が軍事行為開始の公式的名目として挙げたのは、大量破壊兵器の捜索と破壊だった。また米国が、サダム・フセイン政権は国際テロ組織、特にアルカイダと関連していると決めつけていたことも、侵攻の口実に使われた。
イラク軍に対する軍事作戦は「イラクの自由作戦」のコードネームで2003年3月20日に開始。4月9日に米軍が首都バグダッドを占領し、フセイン政権の崩壊を宣言して終了した。その後、米国の管理下で発足したイラク暫定連合政権が国を統べることになる。
米国は爆撃でほぼすべてのインフラを破壊。水も食料も電気も通信手段もなかった。米国が掲げた民主主義国家は建設されず、その代わりにイラク社会は混乱し、国家性が失われ、イスラム武装集団が横行するようになった。武装集団は国を牛耳り、イラクを略奪、虐殺、大量殺戮、民族浄化が行われるテロ国家に変えてしまった。
米国のこの作戦は国連の承認が得られないまま開始され、国際社会の不興を買った。中でも、CBSテレビがバグダッド近郊のアブグレイブ刑務所でのイラク人囚人への拷問を撮影した写真を放映すると、米国内でこれは大きなスキャンダルに発展した。
5月1日、ジョージ・ブッシュ・ジュニア米大統領は戦闘行為の終了を宣言した。
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