【視点】アジア戦線における米国の失敗 北朝鮮はバイデン大統領の中国封じ込め計画を台無しにする可能性がある

米政権が中国の気球から手を引くやいなや、もっと大きな何かがそれに取って代わるように飛び立つかもしれない。北朝鮮は、国軍創設75周年を記念する軍事パレードで、大陸間弾道ミサイルなどの最新兵器を披露する可能性がある。これまで発表されてきた北朝鮮の全面的な核増強へのコミットメントを考慮すると、北朝鮮の技術革新は米国とその同盟国にとって実に頭の痛い問題であり、インド太平洋地域における中国への抑止という基本的な方針から努力をそらすことになりかねない。
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米国のドナルド・トランプ前大統領も当初は中国に注力するつもりだったが、北朝鮮の核ミサイル開発を少しでも遅らせるために、その任期の大部分を金正恩との交渉に費やさざるを得なかった。しかし、2018年のオリンピック休戦の効果はとうの昔に消え失せ、最優先事項を新型コロナウイルスの感染予防対策としていた北朝鮮は今、以前の状態を取り戻しつつある。
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北朝鮮は2022年、ミサイル発射回数で過去最多を更新したものの、2023年には米韓演習の規模が拡大するため、米国を交渉のテーブルにつかせるためにより多くのリスクを冒し始める可能性がある。
韓国峨山政策研究院・外交安保センターの梁旭(ヤン・ウク)研究委員は、「北朝鮮は合同野外演習に対して、当然何らかの形で、突然騒ぎを起こすだろう。北朝鮮は事前に地ならしをし、2月8日の軍事パレード以降、日々温度を上げ始めるだろう」と述べている。
実際に衝突が起きる可能性は否定できない。梁氏によると、米国と韓国の行動以外に、国内政治的な理由によって起きる可能性がある。金正恩氏は最近、娘のジュエさんと共に、軍事的な場面や公の場に姿を現すことが多くなっている。朝鮮人民軍の創設75周年の晩餐会の写真では、ジュエさんがテーブルの真ん中に座り、将兵に囲まれている。しかし、こういった形で後継者候補を強調することは、正恩氏の年齢や健康状態とは関係がない。
梁氏は、「私が最も懸念しているのは、彼らのシステムの安定性が弱まっていることだ。そして、毎回彼らは同じ反応をするのだ。つまり、噛みつくのだ。金正日氏が(2010年に)亡くなる少し前、正恩氏の姿が初めて公開された時の雰囲気を思い出してほしい。そして、今と同じ危機的状況だと判断すれば、北朝鮮政府は行動に移るだろう。その最たるものが、コルベット「天安」(が沈没した事件)と延坪島(砲撃)事件だ(注:この2つの事件も2010年に発生している)」と指摘している。
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現在、北朝鮮は実際に核兵器を保有しており、小さな衝突であっても核衝突に発展する恐れがあるため、状況は複雑なものになっている。
「(北朝鮮では)2022年、核戦力政策法が成立したが、その法令は単に核武装していることを表明するというものではない。特に、第6条では核兵器の使用において5つの条件を挙げているが、ここでは、戦争になれば持っているものは何でも使うと、実質的には述べられているのだ。どんな理由であれ、それが代理戦争であれ、そんなことは重要ではない。あらゆる物が使用されることになるだろう」
梁氏によると、これらの物事は、北朝鮮が極度の緊張状態にあり、最終的には最悪のシナリオを選択する可能性があることを示唆している。これを回避するためには、韓国は核兵器の使用を含む「拡大抑止」の一環として、毅然とした対応態勢を示し、米軍の能力を最大限に活用する必要がある。しかし、米国にはその準備ができているのだろうか?言葉の上では、イエスだ。米国のロイド・オースティン国防長官が最近ソウルを訪問した際の主なテーマの一つは、韓国に対する「鉄壁の支援」だった。また、オースティン氏は韓国側との会談の前夜に発表した政策文書で、米国の「ライバル」からの「挑戦」は韓国にとっての挑戦でもあり、韓国政府も「ルールに基づく秩序」を守る必要があると記している。また、日本との3国間協力の強化だけでなく、「拡大抑止」の仕組みをインド太平洋地域全体に拡大すると述べられている。
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これには、中国をあらゆる面で封じ込めるために、韓国をできるだけ巻き込もうという意図が見え隠れしている。北朝鮮政府の軍事行動は確かに韓国政府を心配させるものだが、韓国は米国との軍事同盟の焦点を、優先度が高いと判断する北朝鮮の核の脅威に対抗することに集中させようとしている。そして、同盟国が優柔不断な態度をみせるのであれば、韓国政府は独自に核兵器を手に入れるという選択肢さえ検討しているようにみえる。
韓国慶南大学極東地域研究院の趙眞九(チョ・ジング)教授は、「米国が韓国と日本の権利を認める可能性はゼロに等しい。NPT(核不拡散条約)からの脱退が必要になったり、国際社会から制裁を受けたりなど、さまざまな問題が発生するだろう。また、現在我々は原子力発電に大きく依存しており、そのための原料が我々にはない。海外からの物資に頼っている我々は、断ち切られる可能性があるのだ。これではパンドラの箱が開いてしまう。だから、誰も北朝鮮の核保有を認めないのだ」と述べている。
対北朝鮮制裁は朝鮮半島の核問題解決の可能性を遠ざけただけだった=露外務省
したがって、韓国が核兵器を開発すれば、北朝鮮の核問題の解決に役立つと主張することは、非常に単純化された論調だと梁氏は指摘している。とはいえ、世論は長い間この選択肢に支持しており、韓国政府の政治家もこれを無視することはできない。また、日本が加わる三国間の相互関係に対する根強い嫌悪感も考慮せずにはいられないのだ。
梁氏は、「韓国、米国、日本による軍事協力は急務であり、韓国で戦争が起きた場合にそなえてこれを行う必要がある。しかし、我々の政府は、これによる政治的な利益を全く得ていないのだ。そのため、安全保障の重要性を理解している与党でさえ、日本との関わりを持ちたがらず、こういった協力を最小限にとどめようとしている。つまり今、米国が3国間協力を(強化)しようと思えば思うほど、韓国はそれを望んでいない、というのが現状だ。これは今後も変わることはないだろう」と説明している。
また、米国にとっては、中国のパワーに対抗するためには、3国間協力の強化が唯一の方法である。単独では十分な強さは持っていないからだ、と専門家は指摘している。特に、中国が何らかの分野で圧倒的な優位性を示したい場合はそうだという。
北朝鮮の能力は非常に小さい。しかし、もし気球1つで米国で大騒ぎになり、指導部が無害な気球を撃ち落とすために最新鋭の戦闘機を投入しなければならなかったとしたら、北朝鮮政府はアジア戦線でバイデン大統領の手の内にあるカードをごちゃごちゃにするチャンスが十分にあるのは確かである。そして、北朝鮮はその舵取りをする機会を逃すことはないだろう。
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