「ノルドストリーム」の爆破工作

発生前にもNATO機巡回 ノルドストリーム爆破テロ

2022年9月に起こったロシアから欧州に天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム」の爆破テロに関連し、発生3ヶ月前の6月に北大西洋条約機構(NATO)の海軍機が現場周辺の海域を定期的に旋回していたことが、航空機の位置を追跡するサービス「Flightradar24」のデータで明らかになった。これまでに、爆発から1時間後にも米国の哨戒機「P-8A・ポセイドン」が爆発地点の周辺を通過していたことが分かっている。
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ピューリッツァー賞受賞者でもある米ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏は8日、2022年6月に実施された軍事演習「バルトップス演習」を隠れ蓑にし、米海軍のダイバーが「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」の下に爆発物を設置したとする記事を発表した。そのなかでは、ジョー・バイデン米大統領がこの作戦を決定したと述べられている。米政権は、ハーシュ氏の記事は「真っ赤な嘘であり、完全な捏造」であるとし、すべての疑惑を否定している。
今回「Flightradar24」のデータで新たに明らかになったのは、爆発テロ発生の3ヶ月前の6月8日~16日、独米の哨戒機「P-3・オリオン」や「P-8・ポセイドン」が現場周辺を定期的に飛行していたということ。これらの哨戒機は現場周辺で高度を下げており、ほぼ毎回無線中継機の通信が途絶え、一部の飛行履歴が表示されなくなっている。
例えば、8日には米哨戒機「P-8 Poseidon」が、ボーンホルム島(デンマーク領)の北東で将来 3 回爆発が起こる地点の上空を円を描くように飛行。独「P-3 オリオン」も同じ海域の上空を「8の字」飛行していたことが確認できる。11~15日にもポセイドンが爆破現場の周辺に毎日飛来し、低高度で何度も旋回する動きをみせている。
こうしたデータは、NATO軍事演習「バルトップス」に参加した米国の潜水部隊が「ノルド・ストリーム」の下部に爆破装置を設置し、それを3か月後にノルウェーが作動させたために起きたとするハーシュ氏の主張に合致する。
記録されている哨戒機の最小飛行高度は600メートル弱となっているものの、飛行履歴に残されていない部分ではさらに低高度で飛行していた可能性もある。
露軍事専門家のイーゴリ・コロトチェンコ氏も、NATOがこの飛行時に爆発物を仕掛けた可能性は排除できないとし、次のように述べている。

「爆発物を仕掛ける際は、周辺海域に目撃者となりうる船がないか監視する必要がある。また、こうした哨戒活動を行っていれば、なにか問題が起こったときや『見つかった』場合に、潜水部隊を緊急脱出させることもできる」

9月26日、「ノルドストリーム1、2」の両パイプラインで相次いで爆発とガス漏れが発生した。ロシア外務省はこれまでにハーシュ氏の記事について、「ロシアにとってセンセーショナルなものでも、予想外のものではない。ロシア政府は米国の関与を想定していた」とコメントを発表。また、ロシアはこの事件への対応がない状態を続けることはなく、政治的・法的措置の両方を講じることが可能であると指摘した。
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