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イースター島の古代文字 ロシアの言語学者がその謎を一つ解明した

ロシアの言語学者アルベルト・ダブレシン氏が、南米チリ領のイースター島の原住民が使用していた文字の解明に一歩近づいた。19世紀以降、世界中の言語学者が現地の古代文字「ロンゴロンゴ」を読むことを試みてきたが、解読には至っていない。
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南太平洋に浮かぶイースター島には、13世紀から人が住み続けている。ポリネシアからこの島に移住した人々が、現地でラパヌイ族を形成していった。1722年にヨーロッパ人がイースター島に到着するまで、ラパヌイ族はロンゴロンゴという文字体系を持ち、19世紀半ばまで使用していた。ポリネシアの人々の文字として唯一知られているもので、この文字が刻まれた20数枚の木板が世界各地の博物館に保存されている。19世紀後半、ロンゴロンゴは研究者の関心を集めるようになったが、それまで提唱されていた象形文字の読み方によって解読できたとは言えない状況がつづいている。
木の板にはイースター島の住民が書いた文字が残されている
どのような文字体系であっても、それを解読する際には、その証拠能力の説得力がどの程度か、どのような基準で検証するかが重要であるという。その検証方法は、マヤ文字解読に成功したロシア人学者ユーリ・クノロゾフ氏が定式化したもので、クロスリーディング法と呼ばれている。その本質は、同じ文字の読みが異なる文脈で出てくれば、それは偶然とは考えにくく、結果としてその文字はその通りに読める、というもの。クノロゾフ氏が行ったマヤ文字の解読では、この「クロスリーディング」という手法が中心となっており、現在でも世界中の言語学者や碑文研究者がこの方法を使用している。
ロシア国立人文大学とメキシコのベラクルス州立大学の人類学者・言語学者であるアルベルト・ダブレシン氏は今回、この方法を採用した。2022年6月に学術誌「ポリネシアン・ソサエティ」にロンゴロンゴのうち20個の記号の読み方を発表したが、そのうちの12個はクロスリーディング法で検証したものだった。
【人物】世界で初めてマヤ文字解読に成功したロシア人学者クノロゾフ 「人間の知恵で作られたものが他の人間に解決できないはずがない」
ロンゴロンゴの中には、音と意味を伝える8つの言語記号と、音だけを伝える4つの音節記号が含まれており、MEA「赤」、TAHI「数字の1」、TOKI「原始的な斧」などが解読された。さらに、文字から音節のka, ki, paの特定に成功した。ロンゴロンゴは、エジプトや中国、マヤの象形文字に似た構造を持つ言語音節文字であると思われていたが、ロンゴロンゴの中には、物や行為を表すものがあり、それらを視覚的に再現したものもある。例えば、アザラシの記号はPAと読むが、ラパヌイ語で「アザラシ」はPAKIAと発音する。
しかし、現地の碑文に書かれた文字は、現代のラパヌイ語とはほとんど似ていないことがわかった。これは、ヨーロッパの言語が島民に影響を与えたためだとみられている。
ダブレシン氏の研究論文を読んだロシアの専門家は、同氏が今回提案した読み方が謎に包まれたロンゴロンゴの石版を読む状況を変えることになると認めたものの、研究者らがこの古代文字を完全に読めるようになるには、まだまだ時間がかかる可能性があると指摘している。
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