両国関係の慢性的危機の原因は見解の相違
「日本は1965年に結ばれた日韓請求権・経済協力協定を引き合いに、この賠償支払いを断固、拒否していました。この協定は、徴用工の請求権問題は、日本からの無償資金協力によって決着済みとするというものです。このとき、日本は韓国に大規模な資金を供与しています。韓国は日本に対して今後一切の請求を行わないものとして、そこには、韓国の発展に向けた融資も含まれていました。
しかしそれでも、韓国は日本に対し、その後また支払いの請求を行ったのです。日本政府は、すでに行った謝罪をまた繰り返したり、「歴史的な支払い」を再び行う必要はないとの立場を示しました。また両国の間には、まだ『慰安婦問題』に対する日本からの謝罪という大きな問題があります。そこで、韓国が徴用工問題での支払いを求めてきたのに対し、日本は断固これを拒否したのです。それが韓国との急激な関係悪化につながり、経済関係にも大きな影響を及ぼしました」。
打撃を受けた経済
個人的要素
「現在の日韓関係に大きな役割を果たしていることの一つに、尹錫悦大統領の個人的な要素があります。彼の一家は、いわゆる親日家で、多くの家族が日本に留学したり、日本と何らかの関係を持っています。しかしもちろん、もっとも大きな刺激となったのは、できるだけ早期に日本との隣国関係を改善しなければならないという国の指導者としての立場でしょう。
そこで、大統領は積極性を見せました。この問題を最優先事項として、自ら管理し、日本に対し、妥協案を提示しました。つまり、今、韓国は、両国の複雑な歴史的紛争に『目を瞑ろう』としているのです」。
いずれにせよ、資金は日本からのもの
「これらの企業は1965年に日本から多額の経済援助を受け取りました。ですから、今回の賠償支払い計画にこれらの企業が参加するのは、そのときの日本の資金を再分配するものと言えるでしょう。そのお金は、日本が韓国に対する賠償として支払ったのですから、それらの企業はそれを寄付に回すことは十分に可能です。
つまり、事実上、賠償金は韓国経済に対する日本の投資から出ているわけですから、日本もこの計画に関与しているということですたとえば鉄鋼企業のポスコは日本の技術を用いて作られた会社で、その企業の成長には、当時、日本が供与した資金が使われました。そしてこのポスコは現在、大手企業となり、その生産量では、世界でも上位に入っています」。
善良な考え方も成功を保証するものではない
「日本との突然の和解はあまりにも急激すぎると感じる人もいるでしょう。またこれに反対する人々の抗議が起こる可能性もあり、計画が別のネガティブな方向に進んでいく可能性もあります」。
米国の関心
「今回の和解案は、国際情勢が急速に激化しているのを背景に可能となったものです。この情勢悪化は、米国にとって、中国やロシアなどの主な競争相手との対立の場所になっている北東アジアにも関係しています。米国は中国「包囲」路線をとり、中国の成長にとって良好と言えない条件を作り出そうとしています。地域では、新たな軍事政治ブロックが活発な動きを見せ、米国主導によってそれらのブロックの発展が強化されています。まさにこの路線において、米日韓の3国による軍事協力というものは米国にとって優先課題の一つです。この3カ国の関係は、かなり以前に創られたものですが、軍事面で安定した強固なものにはなっていないのです」。
「この保守勢力は北朝鮮に対してきわめて厳しいアプローチをとることを主張しており、そのためには、米国との同盟関係を強化し、日本との関係を改善する必要があるのです。この目的のために、3カ国での合同軍事演習がすでに実施されています。韓国と日本は米国にとってますます重要なパートナー国となっています。それが、3カ国が、地域においてより効果的な同盟になるために、日本との関係改善に向けた刺激となっています。」