「金は最も独立した信頼できる金融商品の一つです。金の強みは、市場が下落し、世界のすべてがうまくいかないと予想されるときに、投資家を守る資産であるということです。そして今が、まさにその時なのです。世界経済は減速し、景気後退の兆しがあり、さらに軍事紛争も起きています。これに関連して、経済の急成長が期待できない『失われた10年』の到来が予測されています。こうした懸念を背景に、金の価格は上昇しているのです。そして、銀行破綻や原油価格の高騰は、世界情勢を反映したものです。原油価格が100ドル(約1万3250円)を超える場合、通常は経済成長が見込まれることを意味します。そして、人々が積極的に金を買うということは、世界経済の一般的な状態に対する懸念が高まっていることを示しています。しかし、それは崩壊の事実でも、最も悲観的な展開の兆候でもありません。世界経済には、成長と後退のサイクルがあるだけです。金価格の上昇は、現在は停滞期にあることを示しているにすぎません。しかし、これを根拠に破滅的な予測をするのは明らかに時期尚早です」
「ウクライナ紛争の規模も局地的です。つまり、そういったことは起こりうるリスクにのみ関係しており、世界経済における実際の大きな損失にはなりません。したがって、この軍事紛争が深刻な世界経済危機を誘発することはありません。また、世界経済はパンデミックの影響にうまく対処しています。日本で金価格の上昇傾向が起きていることについては、日銀の保守主義によるものであり、金は良好な保護準備金なのです」
「米国の銀行危機は、日本の銀行システムに対するリスクを増大させました。なぜなら、この2つのシステムは非常に相互関係が強く、日本の銀行は米国で大きな利益を持っているためです。これとは別に、事実上すべての通貨において、金の価値は最大レベルではないものの、非常に高い水準にあります。しかし、成長傾向は10年チャートではっきりと見て取れます。これは、米ドルと金に対する、通貨の切り下げが長引いていることを反映しています。現在の金融システムは、米国が国境を越えてインフレを広げるだけではなく、自国のドルの切り下げも同時にゆっくりと行われるようになっています。そしてこのプロセスは、ユーロ・ドルの金融システム危機の再熱を背景に、再び加速しています。特に日本では、日銀の大規模緩和政策の継続により、対米ドルの円安が急激に進んでいます。これは、今日10年ぶりの高値をつけた円建ての金の価格にも反映されています」