「現在、岸田政権の成果というのは、事実、矛盾したものになっています。ある局面では大きな功績を上げているものの、一方で別の局面では目立った成果はありません。ですから、首相としての彼の評価は二義的なものです。
また岸田政権に入ってからの経済における変化を評価するとき、大きな成果がでたかどうかは後になってみないと分からないものです。少なくとも、5年はかかります。一方で、岸田首相が政権に就いてからまだ1年半しか経っていません。
しかも、日本の経済状況は世界経済から派生したものであり、景気は政府が作用できるものではありません。日本の経済は依然として、外交関係、市場、外国で行われた投資による収入に左右され、第三次産業は外国企業のために稼働しています。一方、世界経済には発展が見られず、日本経済にも成長は見られません。つまり、日本の所得が伸びないのは、すべてが世界情勢に依存しているからです」
「こうした社会問題もまた、1年半で解決し、すぐに成果を出せるものではありません。つまり、人口問題においても、独自の解決策を考え出すのは難しいことです。この分野で成功するには、長年にわたる熟考の末にまとめられた政策が必要なのです。
しかしながら一方で、岸田首相の外交政策では、より説得力のある成果が得られています。何よりこれは、プロパガンダとして使用できる岸田首相のメディア戦略の成功でしょう。とりわけ、これは、岸田首相の積極的な外交、数多くの外国訪問の成果です。外交上の積極性で言えば、安倍元首相にまったく引けをとっていません。岸田首相には、外相を務めていた「信頼を得ていた時期」に培われた素晴らしい人間関係があります。こうした岸田首相の「外交の経験」―つまり世界のリーダーたちとの個人的な関係というものが、首相になった今、うまく活用されているのです。
とりわけ、米国やその同盟国との関係です。従って、岸田政権の路線はもちろん新欧米路線であり、NATO寄りです。安倍元首相が推し進めていたあからさまな愛国主義はありません。
そして、対ロシア外交に関しても、岸田首相は安倍元首相とはまったく異なった立場をとっています。
さらに、地域の軍事政治的バランスが中国に有利に傾いていることから、日本の世論も次第に平和主義から距離を置きつつあります。岸田首相は社会のこうしたムードをうまく『キャッチ』し、防衛費増額や最新型兵器の開発などを進めています」
「防衛分野での近代化を進めるための資金をどのように捻出するのかについてはいまだに不明瞭なのです。というのも、国家予算は収支の均衡が取れていないからです。国債が非常に多く、しかも多額の国債費がかかります。ですから、野望的な防衛プランを実行するには、国債を増やすか増税するしかありません。しかしこれは非常に厳しい問題です。というのも、日本では増税というものをきわめて否定的に捉えられているからです。従って、防衛費の増大(最大GDPの2%)の財源をどのように確保するのかは、依然、分からない状態です」
「唯一、今の状況で岸田首相にとって幸いなのは、近いうちに選挙がないということでしょう。次の選挙は2025年です。
一方で5月に岸田首相は、広島サミットをホストとして開催します。これを背景に、首相は現在、積極的に地域外交に励んでいます。韓国を訪問し、これは社会でも支持を得ました。
さらに、G7サミット後に衆院解散、総選挙があるという予測も立てられています。このようにして、衆院で自民党の絶対安定多数をさらに強固なものにしようとしているのです」
「つまり、日本でのG7サミットは岸田首相にとって、今の首相として持っている可能性のピークになるのです。ですから、岸田首相が、この機会を利用して、自民党の『優位性』を拡大しようとしているという可能性も除外できません。もし岸田首相がこれを実際に成し遂げることができれば、政治界における自身の権力を長期にわたって確固たるものにすることができるでしょう」
「プロパガンダ的なものとしては、何より、ウクライナ情勢を始めとした欧米との連帯でしょう。
岸田首相が、台湾問題はヨーロッパには何の関係もなく、この問題に介入すべきではないと発言したフランスのマクロン大統領に議論を挑んだのにも理由があります。岸田首相はマクロン大統領の見解は正しいアプローチではないとして、これに反論しました。そして、ウクライナ問題も、日本を含む世界全体の安全問題なのだと述べたのです」