米国が発表した報復措置には次のような項目が列挙されている。
米国は6月1日より、新STARTに該当する自国の戦略兵器の地位および位置についての情報提供をロシアには行わない。
米国は新STARTの枠内で査察を行うロシア人専門家らのために発行したビザを回収する。また、新たにビザを発行する構えにはない。
米国はロシア連邦に対し、米国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)および潜水艦弾道ミサイルの発射に影響を与える遠隔測定による情報の提供を停止する。
米国はハードルを上げた
軍事専門家のアレクセイ・レオンコフ氏は、スプートニクからの取材にコメントした中で、米国が大陸間弾道ミサイル発射の遠隔測定情報をロシアと「共有」することを拒否したことを「非常識」と語っている。
「非常に危険な条項である。これでは、我々は米国の発射をすべて戦闘発射と見なさざるをえないことになる。そうすれば、米国はロシアを刺激して報復攻撃をする恐れがある」
レオンコフ氏は、この決定で安全が脅かされるのはロシアだけでなく、米国も全世界も同じだと指摘している。
もう、条約に戻るか、完全に葬り去るかしかない
ロシア科学アカデミー、世界経済国際関係大学、国際安全保障センターの専門家でプロジェクト「ヴァットフォール」の共同設立者のドミトリー・ステファノフ氏は、現時点では互いの戦略攻撃兵器の状態に関しては、いわゆる技術的な手段でかなりの量の情報は入手可能だと指摘している。
「ここで起きる重要な変化は、弾頭を搭載した発射台の実際の装備である。ロシアでも、特に米国でも、弾道ミサイルに弾頭を、いわばより完全に搭載する可能性がある。だからこそ、ここでは詳細な通知と査察活動の鍵だったのだ」
ステファノフ氏は、ここでの重要性は、米国務省もロシア外務省に続き、新START条約の範囲内で空母と核弾頭の全体的な数の制限の順守に注意を喚起した点だと強調する。
「事実上、今や状況は対称的になった。この段階からは、完全に機能する条約に戻るか、それを葬り去るか、いずれの方向にも進みうる」
ロシアの新START への参加停止は、2月末にプーチン大統領によって発表された。プーチン 大統領はその際に、STARTの議論に戻る前に、英仏などの国が主張が何なのかを理解し、これらの国の戦略兵器の軍備、すなわちNATOの総合攻撃力をどう考慮するかが必要だと指摘した。
ロシア外務省のセルゲイ・リャブコフ次官は、ロシアが同条約で定められた中心的な数量制限を遵守する義務を自発的に引き受けたと強調している。
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