【視点】両国は「リセット」を期待? 天皇皇后両陛下のインドネシア訪問の重要性を分析

日本の徳仁天皇、雅子皇后は6月17日から23日、国際親善を目的にインドネシアを公式訪問される。訪問が丸々一週間にわたることはその重要性を意味している。スプートニクは専門家とともに天皇皇后両陛下のインドネシア訪問の重要性を分析した。政治学博士でロシア科学アカデミー、東洋学研究所、東南アジア豪州オセアニア調査センターの上級研究員のアレクセイ・ドゥルゴフ氏は歴史が未天皇皇后両陛下の訪問の成功に大きな影響を及ぼしているとして、次のように語っている。
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「第二次世界大戦中(1943~1945年)、インドネシアが日本に占領されたことをインドネシアの人たちは忘れてはいません。後にインドネシア大統領となったスカルノ氏自身も、1940年代には日本軍に積極的に協力していました。スカルノ氏は長年、オランダに植民地支配されていたインドネシアの独立に日本が助力してくれると考えていたからです。そのため、オランダ領東インドの人々は、日本が掲げた『アジア人のためのアジア』というスローガンを熱狂的に信じました。インドネシアの人たちが日本に簡単に占領を許したのは、将来の独立を期待していたからです。

ところが、その後の1940年代の歴史は、アジアが何よりも日本人のためのものであることをはっきり示しました。日本はインドネシア人を労働者として、また占領軍のための兵士として利用したのです。このために後日、今度は日本人への抵抗運動が起き、地元住民は弾圧を受けました。つまり、天皇陛下のご訪問の主な目的は、日本統治時代にインドネシアが負わされた『歴史の傷』を癒すことなのです」

ドゥルゴフ氏は、この歴史の傷は今でも時折両国間の関係に立ち現れてきていると指摘する一方、日本にとっては今、インドネシアとの安定した良好な関係を持つことが非常に重要だと見ている。

「21世紀、インドネシアは世界で4番目に人口の多い国であり、その経済は 躍進的に伸びています(GDP成長率は年5%)。つまりインドネシア市場は日本のビジネスにとっては非常に魅力的です。ところが、今、インドネシアで大手を振っているのは中国。このため、日本もインドネシア市場での存在感を高めようと必死なわけです。インドネシアはG20に加盟しており、2022年のG20サミットはバリ島で開催しました。ですから日本はインドネシアとの二国間関係であらゆる歴史的事項が協力の妨げにならないよう、『取り繕う』としているのです」

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最終的にはスカルノ氏を中心とするインドネシアの愛国者たちは、1945年にはすでに独立宣言を決めていた。ドゥルゴフ氏は、日本人は降伏後、それを一切妨げようとはせず、逆に独立を促したと指摘している。

「占領はどうあっても人道的なものではありえませんが、第二次世界大戦後、日本はもはやインドネシアを植民地としては扱いませんでした。日本はただ、インドネシアに日本のおかげで主権を得たと思ってほしかったわけです。だから、経済も欧州ではなく、日本と緊密に結びつきなさいよと。 1940年代、インドネシアを征服し、欧州の人間が万能でないことをアジアに知らしめたのはまさに日本だったからです。それと、戦争中はオランダ、英国、米国でさえ、長きにわたって日本には対抗できなかったことがあります」

それは、日本が降伏をしようが、その後、何十年にもわかって事実上、米国の占領下に置かれることになろうとも、今日でさえも日本人のプライドをくすぐるほど、非常に心地よい感覚だったのだ。広島・長崎に原爆が投下されたあとは、日本人はインドネシアどころではなくなった。だが、ドゥルゴフ氏は、日本には今こそインドネシアと「ゼロから」善隣関係を築く絶好の時との見方を示している。
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