「第二次世界大戦中(1943~1945年)、インドネシアが日本に占領されたことをインドネシアの人たちは忘れてはいません。後にインドネシア大統領となったスカルノ氏自身も、1940年代には日本軍に積極的に協力していました。スカルノ氏は長年、オランダに植民地支配されていたインドネシアの独立に日本が助力してくれると考えていたからです。そのため、オランダ領東インドの人々は、日本が掲げた『アジア人のためのアジア』というスローガンを熱狂的に信じました。インドネシアの人たちが日本に簡単に占領を許したのは、将来の独立を期待していたからです。
ところが、その後の1940年代の歴史は、アジアが何よりも日本人のためのものであることをはっきり示しました。日本はインドネシア人を労働者として、また占領軍のための兵士として利用したのです。このために後日、今度は日本人への抵抗運動が起き、地元住民は弾圧を受けました。つまり、天皇陛下のご訪問の主な目的は、日本統治時代にインドネシアが負わされた『歴史の傷』を癒すことなのです」
「21世紀、インドネシアは世界で4番目に人口の多い国であり、その経済は 躍進的に伸びています(GDP成長率は年5%)。つまりインドネシア市場は日本のビジネスにとっては非常に魅力的です。ところが、今、インドネシアで大手を振っているのは中国。このため、日本もインドネシア市場での存在感を高めようと必死なわけです。インドネシアはG20に加盟しており、2022年のG20サミットはバリ島で開催しました。ですから日本はインドネシアとの二国間関係であらゆる歴史的事項が協力の妨げにならないよう、『取り繕う』としているのです」
「占領はどうあっても人道的なものではありえませんが、第二次世界大戦後、日本はもはやインドネシアを植民地としては扱いませんでした。日本はただ、インドネシアに日本のおかげで主権を得たと思ってほしかったわけです。だから、経済も欧州ではなく、日本と緊密に結びつきなさいよと。 1940年代、インドネシアを征服し、欧州の人間が万能でないことをアジアに知らしめたのはまさに日本だったからです。それと、戦争中はオランダ、英国、米国でさえ、長きにわたって日本には対抗できなかったことがあります」