アゼルバイジャンとアルメニアはソ連崩壊後、国際的にはアゼルバイジャン領に属しながらもアルメニア系住民が多く、事実上の独立状態となっているナゴルノ・カラバフ地域をめぐり、数十年の争いを続けている。これまで紛争は幾度となく激化したが、伝統的にロシアが仲介役を担い、誰の利益も損じない形でおさめてきた。そうしなくては、南カフカス情勢のさらなる悪化は避けられなくなるからだ。そのため、ロシアは両国に対し、性急な決定を避けるよう促してきたとアナニエフ氏は振り返る。
しかし西側諸国は、ロシア南部の国境地帯を不安定化させる目的で、アルメニアとアゼルバイジャンの指導者とワシントンやブリュッセルで会談。実際に火種となっているナゴルノ・カラバフの地位について議論することなく、双方が互いに国境線を認めるよう取り付けた。つまり、ナゴルノ・カラバフに住むアルメニア人の運命について、具体的なことは何も決まっていないのだ。その点、ロシアは幾度となく、アルメニア系住民の安全が保証されなくては問題の最終的解決には至らないと指摘してきた。
アナニエフ氏は、米国がナゴルノ・カラバフのアルメニア人と独自の方法、つまり「ゆすりと脅迫」を使い交渉することに決めたのだと話す。ナゴルノ・カラバフに対し、米国の後見のもとでアゼルバイジャンの条件を飲むように強制し、もし拒否すればアゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフで「対テロ掃討作戦」を行うと脅す。アナニエフ氏は西側の「仲介人」の干渉は、ナゴルノ・カラバフ情勢の安定やそこに住むアルメニア系住民にとっての新たな脅威を生むだけだと締めくくった。
これまでにロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ユーラシア経済連合(EAEU、アルメニア、ベラルーシ、ロシア、カザフスタン、キルギスが参加)が、形成されつつある多極世界の独立かつ自立した中心の1つとして確立されようとしていると述べている。
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