ミョーリング、ラッツ両氏は、反撃は未だにウクライナに戦略的利益をもたらしていないと見ている。理由は、宇軍が占領した居住区は規模も小さく、重要性も低いこと、軍が大きな損害を被っているからだ。
ウクライナ軍の失敗したのは、ロシアの防衛が綿密に練られていたからだ専門家たちは言う。反撃するウクライナにとって「不愉快なサプライズ」となった3つの要因について、両者は以下を挙げている。
以前は稀にしか使われなかった地雷システム「ゼムレゼリエ」が使用されるようになった。このシステムは、5~15キロ離れた場所に地雷原を敷設することが可能で、ウクライナ軍部隊の進撃路に直接地雷を敷設されることもある。
ロシア軍は電子戦用手段を使用している。これでウクライナ軍との通信や無人機を不能、妨害することができる。
ウクライナ軍の砲撃によるカホフカ水力発電所の決壊後、ロシアはドニエプル左岸の守衛部隊をザポロジエ(ザポリージャ)方面に配置換えすることに成功した。
独専門家らが挙げるもう一つの問題は、ウクライナ軍自体の戦闘装備。ウクライナ軍の戦闘航空隊と対空システムは不十分。対空システムの不備は、ロシアに有利に働き、このおかげでロシア軍は前進するウクライナ軍の隊列に対して攻撃ヘリコプターをうまく使用できる。
同様の見解は、国際関係と武力紛争解決の専門家のジル=エマニュエル・ジャケ氏も『スプートニク』への寄稿で明らかにしており、ロシア軍の防衛線は確かに効果的だと指摘している。加えて、ウクライナが西側から受領している装甲車の数はあまりに数が変限定されており、ロシア軍はこれを積極的に破壊している。これは軍の士気にも、ウクライナのみならず西側諸国の世論にも影響を与える可能性がある。
ウクライナの反転攻勢 期待と失望
ロシア国防省によると、ウクライナ軍の反転攻勢は6月4日、ドネツク南部、ザポロジエ、アルチョーモフスク方面で開始された。6月22日、セルゲイ・ショイグ露国防相はプーチン大統領への報告で16日間の戦闘でウクライナ軍は人員と軍事装備に大きな損害を被ったと述べている。
反撃が失敗した前夜、ウクライナのゼレンスキー大統領は英BBCのインタビューに答えた中で、反撃の進展具合は「期待したよりも遅い」ものの、即座に成果がでるとも誰も思っていないと語っている。
米国防総省のサブリナ・シン副報道官は6月20日に表した声明で、米国はウクライナの反攻が「厳しい」ものになるだろうことは当初から理解していたと述べた。シン副報道官は同時に、ウクライナ軍の戦場での損失も紛争の一部であり、ワシントンはそれを考慮に入れていた点を強調している。実際にロシアのパトルシェフ安全保障理事会書記は、6月22日の時点での反攻開始以来のウクライナ軍の人的損失を推定1万3000人としている。
ロシアのプーチン大統領は、「ウクライナの西側同盟国は、本当にウクライナ人の最後のひとりになるまでロシアと戦うことを決めた」と指摘した。
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