「高価で、複雑で、扱いにくい」 米製兵器がウクライナの戦場で役に立たない理由=米誌

ウクライナの戦場の特性は、米製軍事装備を使用するのに適していない。米誌「ナショナル・インタレスト」が同誌論説委員を務めるパトリック・ドレナン氏のこうした見解を紹介している。ドレナン氏は、米製兵器はそのテクノロジーの先進性にも関わらず、ウクライナの戦場では「最善の選択肢」とならないか、価格が過度に法外であるか、あるいはその両方の問題がつきまとうと指摘している。
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ウクライナ軍にとって「純然たる地獄」の米兵器

ドレナン氏は例として、歩兵を輸送するための装甲車「ストライカー」を挙げている。これは肝心な時にウクライナ兵にとって「死のトラップ」となりうる。ドレナン氏はストライカーの欠点を、これまでの使用実績をもとに次のように説明している。
「装甲はとても非効率で重く、走行中にタイヤからはね飛んでくる泥がエンジンに入り、幾多のメンテナンス上の問題を引き起こす。車内のコンピュータコマンドディスプレイは常に動くとは限らない。さらに、戦闘服を着た兵士でも、車体が横転した時に死亡することがあった。なぜなら、ベルトがあっていないからだ。さらに車体底部の装甲は薄い」
また、ストライカーの扱いは複雑で、メンテナンスにも多額の費用が掛かると指摘した。
さらに、ドレナン氏は「戦場での実績」がある戦車「エイブラムス」にも言及している。エイブラムスはこの秋に供与される予定である。だが、前線では一度壊れたら修理することはできない。ドレナン氏は、このこと自体が「純然たる地獄」だと強調する。
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例えばエイブラムスの最新の改良型は、ジェット燃料で動くよう最適化されていて、前線ですぐに燃料を補給することはできない。また、敵の視認などに必要不可欠な光学系が損傷した場合、修理のためには部品をまるごと取り外し、後方の拠点に送らなくてはならない。
さらに、エイブラムスの製造には1両あたり1000万ドル(約14億4000万円)のコストがかかる。一方、独製の「レオパルト2」は600万ドル(約8億6000万円)で、2倍近くの差がある。さらにレオパルトはエイブラムスより汚れが飛び散りにくく、重量も軽い。

お高い快楽としての航空部隊

米国は始め、戦場での実績もあるジェット戦闘機「F-16」のウクライナへの供与に消極的だった。F-16はさまざまなタイプの空対地ミサイルのほか、徘徊弾薬(特攻型ドローン)を運搬、使用できる。だが、ドレナン氏はウクライナは「いい選択」をしたとはいえないと指摘する。
スウェーデン政府はこれまでに、自国で開発した戦闘機「サーブ 39 グリペン」の供与をウクライナに提案している。この戦闘機は短い滑走路でも着陸ができるため、ウクライナのインフラ状況に適しているほか、価格も比較的安価だ。飛行1時間あたりのコストはグリペンが7800ドル(67万円)なのに対し、F-16は1万2000ドル(173万円)である。
また、現代の多連装ロケット砲の前には、有人航空機だけで制空権をとるのは困難だとも述べている。
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指摘はこれまでも

西側諸国による兵器供与が始まって以降、多くの専門家はウクライナ軍が運用する上でたくさんの問題が起こるとの懸念を表明していた。さらに、「西側の敵」に対するロシア軍の装備の有効性を指摘する専門家もいる。
元英空軍航空副司令官で軍事アナリストのショーン・ベル氏は「ロシア空軍であれば、大した数でもない旧弊なF-16戦闘機など破壊できるだろう」と述べている。
また、ストライカーはイラクやアフガニスタンの硬い地面の上での走行を念頭に設計されているため、ウクライナの比較的柔らかい国土地帯での展開には向いていない。さらに、サイドポジションから105ミリ砲を撃つと、反動で車両が横転してしまうという重大な欠点もある。
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