同紙はレズニコフ国防相の言葉を次のように伝えている。
「世界の軍事産業にとって、これ以上いい実験場を考え出すことはできないだろう」
同紙は、米国とノルウェーが共同開発した防空ミサイルシステム「NASAMS(ナサムス)」や、独製防空システム「IRIS-T」などが供与されたことによって、「様々なシステムの北大西洋条約機構(NATO)レベルでの共同実験」が可能になったと指摘している。
「こうしたシステムは連携して動いている。彼ら(編注:西側諸国)にとっても、武器が実際に機能するか、どれほど効率的か、改良が必要かなどを実際に見て確かめることができるのは重要だ」
それと同時に、「ウクライナの戦場での実験」により、NATO兵器の欠点も明らかになった。米国の「M777」、ドイツの「PzH2000」、フランスの「カエサル」、ポーランドの「クラブ」といった各種榴弾砲は、激しい戦闘には向いていないことが分かった。これらはロシアの榴弾砲と比べ、連続砲撃能力が低いからだ。フィナンシャル・タイムズは製造メーカーの話として伝えている。
加えてレズニコフ国防相は、GPS誘導の「スマート兵器」や多連装ロケット砲「ハイマース(HIMARS)」は「非常に正確」であることが証明されたが、ロシア軍の電子戦対応装備によって妨害されうるとも述べた。そして「ロシアが対抗策を思いついた場合、我々はパートナー国に情報提供し、彼らはどう対処するか考える」と強調した。
ウクライナ支援の一番のうまみ
各国がウクライナへの軍事支援を続ける背景には、他人の手でロシアを弱体化させる思惑だけでなく、兵器の実証実験でデータを得ようとする狙いがある。ロシア下院のビャチェスラフ・ボロジン議長は4月、「米国やNATOにとってウクライナは兵器と新しい戦争の方法を試す実験場に過ぎない」と述べている。
米中央情報局(CIA)の元職員アンドリュー・ブスタマンテ氏はこれまでに、米国は新たな兵器を開発してウクライナに送っていると述べている。
「米国は戦闘で開発した兵器をテストしている。これは、軍産複合体にとって非常に重要なことだ。自国民を危険にさらすことなく、テスト後に必要なすべての情報とデータを得ることができるためだ。これが、ウクライナ政府を支援することで得られる最大のメリットの1つだ」
また、米放送局CNNも、米軍幹部や英シンクタンクの研究を引用し、米国防総省にとってウクライナ紛争は米国のシステムに関する膨大な情報源となっていると指摘している。
例えば自爆突入型無人航空機「スイッチブレード300」や対レーダーミサイルなどは、戦場での効果が予想より低いことを示した。また、ハイマースについては、酷使されると頻繁にメンテナンスが必要になるという教訓が導き出された。
こうしたデータはさらなる兵器の改良に活用される。米下院情報委員会のジム・ハイムズ民主党下院議員も、導き出された教訓について「一冊の本が書けるだろう」と指摘している。
米国の「実験的」戦争
米国は過去の戦争で度々最新兵器の効果を試してきた。
広島、長崎への原子爆弾投下もその一例である。1945年7月16日に人類初の核実験を行ってから1ヶ月も経たないうちに、両市で「実証実験」を行って数十万人の日本人を虐殺した。
また、1991年の湾岸戦争では、イラク戦車部隊に対して劣化ウラン弾を使用。また、当時最新鋭だった巡航ミサイル「トマホーク」もこのとき初めて実戦で本格的に使用された。
直近ではイラクに対する侵略戦争やアフガニスタンでの「対テロ作戦」の例がある。2003年当時、「しんぶん赤旗」はイラク戦争が「圧倒的な力を誇る兵器群の効果を検証する『実験場』の様相も呈している」と指摘している。
イラク戦争ではバグダッドの住宅街にあるレストランにバンカーバスター(大型の地中貫通爆弾)を打ち込み、民間人14人を殺害した。また、アフガニスタンでは2017年、通常兵器では史上最大の破壊力を持つとされる「MOAB(大規模爆風爆弾兵器)」をテロ組織の撃滅作戦に使っている。
このように、隙あらば世界の紛争に介入し、あらゆる兵器を実戦で使用するのが米国のやり方だ。現在も「自由」や「民主主義」などの美辞麗句を並べ、ウクライナへの軍事支援を行い、兵器の改良や開発に向けたデータを収集している。