匿名を条件にスプートニクからの取材に応じた北海道の水産業界関係者の1人は、環境への影響よりも風評被害によるダメージを危惧している。
「北海道で水揚げされる魚には国外に輸出されているものも結構あります。例えば中国など外国の人にとっては、北海道でも同じ日本は日本なので、『そこでとれている魚って大丈夫なの?』となるのが普通だと思います。もちろん私たちとしては、放出にはずっと反対しています。もし放出されても距離も離れている北海道には影響はないと言い続けていますが、海外から日本の水産物は『うちの国は受け入れない』と言われてしまうと、今後にも影響が出るので危惧しています」
一方で水産関係者は、「解決案と言われてしまうと、私たちは原発の専門者でもないですし、他に何かいい方法があるのかと言われるとわからない」と複雑な心境を明かす。それでも風評被害への懸念は拭えず、現状では反対するほかないという。科学的に安全性が確認され、それを水産業界が分かっていたとしても、内外の消費者の理解が進まなければ風評被害は免れないのだ。
現在、日本産の食品の輸入を規制しているのは12カ国・地域となっている。各国でその内容には違いがあるが、一部では海洋放出を受けて規制強化の動きもみられる。
香港やマカオでは、処理水が放出されれば当局が更なる輸出規制の強化を進める可能性があると現地メディアが報じている。また、IAEAの報告書に理解を示している韓国も、「国民が安心できるまで」は福島県産水産物の輸入禁止措置を続ける方針を示している。
一方、EUは処理水放出を前にして規制撤廃に動いている。EUは先月末から規制を完全撤廃する方向で最終調整を進めており、実現すれば福島県産の魚やキノコ類などの検査証明が不要になる。
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