ノヴィコフさんは子どもたちと森に行くとき、何かお茶や飲み物を持っていくことはない。「現地調達」が基本なのだ。ノヴィコフさんは「私の祖父も、父も、森でその場で色々なものを集めて、美味しくて栄養のあるお茶を作っていました。それはチャーガだったのです。チャーガ、黒スグリの葉っぱ、それの美味しいことといったら、言葉にできません」と振り返る。
ノヴィコフさんが発見したチャーガ。黒いコブのような形をしている
© Nikolay Novikov
白樺の木に寄生するキノコ、チャーガはその抗酸化作用、免疫力強化など様々な健康効果の高さから、主にアジアに向けて高価で取引されるようになった。がんの治療効果を高めるスーパーフードとしても注目が集まり、ロシアから日本へも輸出されている。しかしチャーガが寄生する白樺は2万本に1本とも言われており、素人が見つけられるようなものではない。実際に森で採取しているのは、ノヴィコフさんのような森を知り尽くした男たちである。
「運命に導かれるように田舎の村に移ったわけですが、仕事がほとんどなくて。ベリー類やキノコを集めたり、ほうきを作ったりしていました。その時、チャーガを集めれば転売人に売れる、と知りました。私のチャーガ集めは自己流です。森と、森の中を歩くのが大好きなので、私は歩いてチャーガを集めます。1日あたり15キロは歩きます。
私は神秘的なものを信じているので、森の『主人』にチャーガを見せてくれるよう頼み、クッキーやサンドイッチといった、心ばかりのプレゼントをします。チャーガをお金にするためには、30キロほど集める必要があります。その袋を、チャーガの収集場所に持っていきます。」
チャーガは、日当たりの悪い小川や川の近くの白樺に生える。チャーガは木の「傷」の上で育っていく。チャーガは白樺に文字通り「寄生」し、長い年月をかけて栄養分を吸い取るので、チャーガの周りの木は弱って病気になっていることが多い。このような場所は経験を重ねていくうちに見つけることができる。もしチャーガを見つけたら、その近くにも別のチャーガがあることが多い。
地元の人々は、チャーガの成分を科学的に知っていたわけではないが、長きにわたり、その健康効果を実感していた。
「チャーガは、固形のままお茶にします。ティーポットに握りこぶしの半分くらいのチャーガをそのまま入れると、三煎目くらいまで美味しく入れることができます。新鮮なチャーガ、イワン茶、オレンジの皮という組み合わせはたまりません。美味しいだけでなく身体にとても良いです。
私たちの土地の男は、ハンターも、木こりも、漁師も、屈強で、本当に驚くべき、体力と持久力を持っています。それは間違いなく、チャーガをはじめとした、森の恵みのおかげでしょう。」
ノヴィコフさんが姉と経営するゲストハウス「Valerina Usadba」にはエコツーリズムを目当てにたくさんの都会人がやってくる。大都市を離れれば、手つかずの大自然が残っているのがロシアの魅力だ。大昔から大自然と調和をとりながら暮らしてきたロシア人にとって、このような休息は欠かせないものである。
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