ヴァシリアディス氏の話では、ドイツの化学企業は欧州の外で生産投資を行うことを選んでおり、主な投資先は米国と中国となっている。こうした傾向は税制優遇措置、規制の簡素化、クリーンエネルギーへのアクセスが理由となって起きている。
ドイツ経済研究所は、外国からの直接投資をめぐる競争の激化は憂慮すべき状況と呼んでいる。同研究所の調べでは、昨2022年のドイツの企業投資は記録的な不足に直面した。大方の資金のフローが国外に流出したことがその原因だった。
世界最大の総合化学メーカーである独BASFは今後一切、欧州の活動を打ち切ると宣言し、総工費100億ユーロ(1兆5541億円超)を投じ、中国広東省の湛江市に石油化学複合体の建設をすでに開始している。BASFのオブザーバー理事会の会員でもあるヴァシリアディス氏は、中国政権は安価で環境に優しいエネルギーを大量に用意するというBASFの要件を満たし、敷地の脇に風力発電所を建設したと話している。
金融サービスのケプラー・シェブルー社の化学部門リサーチ共同責任者であるクリスチャン・ファイツ氏は、この先、欧州に新たにアンモニア工場が建設されることはないだろうと述べている。BASFは以前、エネルギーコストの高騰を理由にルートヴィヒスハーフェンに持つ2つのアンモニアプラントのうち1つを閉鎖している。
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