10日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、11日から始まるNATO首脳サミットを前にリトアニアのビリニュスでスウェーデンのウルフ・クリスターソン首相と会談した。両首脳の会談後、ストルテンベルグ事務総長は、エルドアン大統領が批准手続きを進めるようトルコ議会に覚書を送ることで合意したと発表した。
「テロとの闘いや武器禁輸の解除を含む以前に合意した事案の履行をいかに実現するかについて、共通の理解を得ることができた」
スウェーデンとフィンランドは昨年5月、NATO加盟を申請。だが、エルドアン大統領は、2国がトルコの反政府テロ組織を支援しているなどとして拙速な加盟に待ったをかけた。新たなNATO加盟には既存の全加盟国の承認が必要なため、トルコの同意は必須だった。
EU加盟という見返り
百戦錬磨の外交家であるエルドアン大統領が、ただでスウェーデンの加盟を認めるはずはない。今回の合意でトルコが得た見返りは大きなものだった。
会談でスウェーデンは、欧州連合(EU)加盟国として、トルコが長年望んでいたものの遅々として進まなかったEU加盟を促進することに同意した。ストルテンベルグ事務総長は「スウェーデンのNATO加盟とトルコのEU加盟に相関性はない」としているが、事実上の交換条件にあたることは明白だ。
さらに、シリア内戦に絡むトルコへの武器禁輸措置の緩和や、EU圏へのビザの自由化に関する西側社会の支持も獲得した。トルコのオンラインポータル「Haberler.com」は次のように伝えている。
「トルコ政府高官は、この会談でトルコがEU加盟促進、制裁解除、ビザの自由化に関する全面的な支持を得たと表明した」
決定権はトルコに
合意を受け、トルコ国内でも一部で困惑の声が上がる。トルコ紙「アイディンリク」は「政府は西側の懇願に屈した」と評している。
同紙によると、エルドアン大統領は会談のわずか3日前、「テロリストが街を徘徊している国をどうやって信じることができようか。テロと戦わない者たちが、どうやってNATOの敵と戦えるというのか」とスウェーデンの加盟承認に否定的な発言をしている。今回の態度急変に一部野党からは、「屈辱的決定だ。西側の脅しに屈した」との声もあがっているという。
一方、スウェーデンの加盟をいつまでに批准するか、具体的な期限については言及されていない。1週間後か、1ヶ月後か、はたまた1年後か、決定権は依然トルコ側にある。スウェーデン側にさらに揺さぶりをかけてより大きな見返りを引き出すのか、批准手続きを実行してNATO諸国との協調路線を歩むのかはエルドアン大統領次第だ。