「ゼレンスキー氏(ウクライナ大統領)は、ウクライナの西側の軍事同盟(NATO)への加盟手続きが簡素化されることを期待していた。しかし、彼の期待に反して、NATO加盟への道は実際にウクライナに対して開かれているという決議が採択された。ただし、重要な点がある。それは、ウクライナがロシアに勝った場合にのみ、これは起こり得るということだ。すなわち、事実上、欧米はウクライナに対してウクライナ人が最後の1人になるまで戦うよう促しているのだ。
またウクライナは、多くのさまざまな条件を満たさなければならず、それらの履行は国家グループによって監視されることになる。一方、サミット前にいろいろと話題になっていたNATO加盟のための行動計画(MAP)は免除される。つまり、実際のところNATOは、フィンランドとスウェーデンに対してすでに実施したNATO加盟手続きの簡素化をウクライナに関しては拒否したということだ。
ゼレンスキー氏は当然ながら憤慨し、ウクライナのNATOは期待されていないかのようだとする考えを表明した。まさにこのような失望した状態でビリニュスへ飛んだ。NATO加盟国と話し合い、ウクライナのNATOへの速やかな招待と加盟を支持するよう彼らを説得するために。だが彼は、NATOのストルテンベルグ事務総長の記者会見でこれを行う以外に何もよい案を思いつかなかった。しかしゼレンスキー氏は拒否された。ストルテンベルグ氏は記者会見で、NATOがウクライナに関するその決議ですでに定めていた事項を速やかに発表した。こうしてNATO首脳会議におけるゼレンスキー氏の個人的な議題に関する彼の計画は事実上失敗した。
ウクライナがビリニュスで得た唯一のものは、その問題に関する委員会がウクライナ・NATO理事会のレベルに引き上げられたことだ。これによってウクライナは、NATO加盟国と同様の権利を持つことができるようになるとみられている。したがって、必要に応じて会議を招集し、緊急の問題について協議できるようになるということだ。またウクライナを安心させるために、新たなウクライナ支援計画が承認された。それによると、米国、英国、ドイツ、フランスからなる特別グループがつくられているという。これらの国は、ウクライナの安全を保証する条項を策定する義務を負っている。今後、別の国もこれらの国に加わる可能性がある」
「NATO首脳会談の直前、バイデン米大統領はウクライナをNATOに入れる必要はないという考えを公然と表した。これはすでに米国とロシアの直接的な紛争につながる可能性があるからだ。一方、ゼレンスキー氏はいずれにせよ、引き続き米国政府に圧力をかけ、少なくとも次回のNATO首脳会議でウクライナに将来的なNATO加盟への明確な保証が与えられるようにするだろう。ゼレンスキー氏がこの議題を放棄することは決してない。なぜなら現在これは、ウクライナ国内におけるゼレンスキー氏の『唯一の切り札』であり、ゼレンスキー氏が別のすべてのウクライナの政治家たちに対して優勢であることを可能にするからだ。
一方、欧米は今のところウクライナに対して、軍人の訓練支援、技術支援、諜報活動支援、改革実行支援などの『イスラエル版』の安全保障を提供している。しかし、防衛を組織することに関しては、依然としてウクライナ自体が責任を負っている。したがって、ビリニュスで開催のNATO首脳会議の結果、ウクライナが何かを勝ち得ると断定することはできない。
ウクライナ・NATO理事会の創設は、むしろウクライナ政府を『落ち着かせる』ためのものであり、実際のところ、根本的には何も変わっていない」