米国の産業の課題
ヘイスティングス氏は、「NATOの中で最強の国」である米国は自国の軍備を使い果たしたと強調している。
ヘイスティングス氏は、米誌フォーリン・アフェアーズに寄稿した記事のなかで米国のウクライナ向け軍事支援を分析したイェール大学の歴史学教授マイケル・ブレネス氏を引用している。
ブレネス氏によると、バイデン米大統領が約束したものの、米国は「製造と人材プールの不足、サプライチェーンの混乱」に直面しており、これらすべてがウクライナに兵器を提供し、自国のより広範な防衛力を強化する米国の能力を損なっているという。
特に、米国防総省の主要な兵器に使われている部品の多くが外国、特に中国で製造されている。国防総省の請負業者は、二義的な要素(弾薬など)または「ローテク」兵器(対戦車ミサイル「ジャベリン」など)を扱いたくないが、ウクライナではその両方がすこぶる必要とされているという。例えば、戦いが始まってから最初の数か月間だけで、ウクライナは1日に最大500基のジャベリンを失ったとされる。ヘイスティングス氏は、たとえ国防総省の請負業者が生産を加速したとしても、2025年までに生産が追いつくことはないとしている。
ウクライナの運命は軍需工場にかかっている
ヘイスティングス氏によると、欧州ではさらに悪い状況となっており、「そもそも戦闘に慣れている」英国とフランスでさえ状況が悪いという。同氏は、これまで通り欧州諸国は自分たちの防衛について米国に期待していると言及している。
英国には、防衛費の増額と軍の能力の回復について国内で意見の相違がある。ドイツでは昨年、ドイツ連邦軍の装備近代化に1000億ユーロの資金を投じることが決まったが、2月までに自国の防衛に使われたのは約束した資金のわずか1%だったという。
ヘイスティングス氏はまた、軍備増強に関する懐疑的な見方の理由について、紛争がいつ終わってもおかしくないため、そうなった場合にこれらの出費が無駄になってしまうからだと指摘している。一方、同氏は、ウクライナの運命は現在、NATO加盟国の軍需工場に「かかっている」と言及している。
たとえそれを望んだとしても、兵器の生産を増強または再開するには非常に長い時間を要する。
「英国のBAEシステムズ社は最近、米国防総省に対して、ウクライナ軍が保有する主要兵器の一つであるM777榴弾砲の生産再開には少なくとも30か月かかると伝えた。
英国政府との合意に基づく1億9000万ポンド相当の155mm砲の生産にもほぼ同じくらいの時間がかかる」
英国政府との合意に基づく1億9000万ポンド相当の155mm砲の生産にもほぼ同じくらいの時間がかかる」
約束は履行されるか?
ビリニュスで12日に閉幕したNATO首脳会議では、ウクライナに対する複数年にわたる支援パッケージが承認された。そこにはウクライナ軍の装備品をNATO規格と統一することを支援する計画や、NATO・ウクライナ理事会の創設、前提条件なしでウクライナがNATOに加盟する権利の確認などが盛り込まれた。また、NATO首脳会談に合わせてG7諸国はウクライナの安全保障に関する宣言を発表した。安全保障の提供や近代的な軍事装備品の提供を含むこの宣言は、もう一つの「成果」となった。
ロシアの軍事専門家のユーリ・クヌトフ氏はスプートニク通信に対し、NATO加盟国の約束はウクライナを「落ち着かせるため」のものだとの見方を示した。
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