世界の自然災害の数など1960年代までは誰も数えようとはしなかった。このため、災害状況を犠牲者数まで実際に票かするのは難しかった。1973年にベルギーで災害疫学研究センター(CRED)が発足した。これはそうした災害データベースの開発では世界的に先進的な組織だが、そのCREDが2023年7月に出した、発足50周年の記念号CRED Crunchには、これまで発表されてこなかった、CREDの観測開始後に自然災害の発生回数が実際はどう変わったのかを示す指標が掲載されている。
結果は研究者自身が予期しないものだった。自然災害の発生回数は20世紀末にはすでにピークに達し、 その後は減少し続けていたのだ。 「ドライ」な数字が示したものは、2021年までに自然災害の発生回数は1990年代に比較して3分の2に減っていたのだ。しかも、2013年から2023年の間の10年間の自然災害による犠牲者数は観測史上最少の値になっていた。これは1人当たりだけでなく絶対数でも、単位時間当たりの災害犠牲者数が記録史上最低であることを示している。
CREDは記念号で、CREDのデータが国連の出した、地球温暖化が自然大災害の発生頻度に影響しているという評価となぜ一致していないかについて、自然災害の主な原因がサイクロン、洪水、火災だからだと説明している。
地球温暖化で高緯度と低緯度の間の気温差は縮まっている。これでサイクロンのエネルギー収支は縮小するため、その発生頻度は下がっている。洪水の威力も下がっている。温暖化で水域からの蒸発量が増えたからだ。火災件数が減ったのは、CRED曰く農業の向上のおかげで、災害による死者数減少の最も大きな理由は経済成長だという。経済の向上でよりしっかりした家を建てるようになり、生命の危険があるゾーンからの迅速な避難が可能になったからだ。
ところがCREDは自分たちのデータは広範な範囲には伝わらないのではないかと憂慮している。なぜならば国連も世界保健機関(WHO)も世界気象機関(WMO)も地球温暖化が進むにつれて自然災害の数は確実に増加していると言い続けており、その自分たちの主張が疑問視されることを嫌がるからだ。
気候変動と異常気象の関連性を研究している団体「World Weather Attribution」は、新たな調査で、2022年の夏に欧州、米国、中国を襲った極度の干ばつの原因は気候変動にあるとの報告書を出した。
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