修理待ちの破損戦車
米政治専門誌「Politico」はこのごろ、米国を中心とする北大西洋条約機構(NATO)諸国によるウクライナ支援の主軸が、「軍備の供与」から「修理と保全」に移ってきていると指摘した。同誌は、国防総省の兵站補給責任者の話として、米国が欧州に修理拠点の設置を模索していると伝えている。
同誌は一例として、ドイツとポーランドが共同で進める戦車「レオパルト2」の修理拠点の建設計画を挙げている。だが、これまでに伝えられているところによれば、コスト面で合意が得られず交渉は決裂。修理を待っている間、壊れた戦車は使えない状態となっている。
米国防長官府の元安全保障政策アナリストで軍事専門家のミカエル・マルーフ氏は、スプートニクに対し次のように語る。
「戦場の至る所にウクライナ軍の破損した装備が転がっている。修理はできるが、彼らは蓄積したそれらをどう処理していいか知らない」
ウクライナ支援が抱える構造的問題
さらに修理拠点の建設や、損傷した車両を運び、修理する費用、部品の入手などを考慮すると「問題に取り組むのは困難だ」とマルーフ氏は続ける。ウクライナはほぼ全ての装備を、西側の様々な国からの異なるタイプの武器供給に頼っている。これら装備の修理に関する全工程を、西側諸国が協調して取り組めるかという課題については、「そのプロセスは悪夢になるだろう」と指摘している。
「このことはすでに複雑になっている問題に、さらなる複雑性を与えることになる。NATOと米国がすでに抱えている供給面での負担に、さらなる修理・輸送面での悪夢が加われば、立ち行かなくなる」
米国はすでにウクライナ軍が利用可能な軍事装備をかき集めるために、世界中を駆け回っている。だが、これは世界の他の地域における米軍の即応性を犠牲にすることにつながりかねない。マルーフ氏は次のように締めくくっている。
「すでに米海軍は、装備品の一部のウクライナへの供給を余儀なくされたことに危機感を持っている。全ての行動には結果が伴う。非常に慎重に比較検討する必要があるが、まだこの作業が終わったとは思えない」
これまでに米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、ウクライナの反転攻勢開始からわずか2週間で、西側諸国が供与した兵器の最大で2割が損傷、または完全に撃破された可能性があると伝えた。
これに先立ち、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、ウクライナ軍の反転攻勢開始から、ロシアはウクライナ軍の航空機21機、ヘリコプター5機、戦車を含む戦闘車両1244両、特殊車両914台、防空システム2基、自走式多連装ロケット砲25基を破壊したと発表した。ウクライナ軍は全ての戦線で攻勢に失敗し、最大で2万6000人の人的損失を出した。
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