【視点】アジアにおけるNATOは日本に安全保障をもたらすのではなく、遠ざけている?

在日本中国大使館は、アジア太平洋地域における外交政策のプロセスを批判する談話を発表した。北大西洋条約機構(NATO)は自らを地域的組織として位置づけているが、その地理的範囲を超え続けており、この欧米の軍事同盟はアジア諸国に防衛費増額への意欲をかき立て、それによってブロック対立をあおっていると指摘している。
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スプートニク通信は、NATOのアジア太平洋地域への進出が国連憲章で認められている集団的自衛権の概念を超えるかどうかを専門家と議論した。また、なぜ中国はこの談話を日本で発表したのかについて専門家の意見を聞いた。
ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO)アジア太平洋研究センターのアレクサンドル・ロマノフ所長によると、確かにNATOはまさにその加盟国の集団安全保障の枠を徐々に超えつつあるという。
「これは中国封じ込めが原因で米国のアジアの同盟国の役割がこの地域で大幅に増大したことと関連している。その同盟国というのは、まず日本と韓国だ。これらの国にある米軍基地は、これらの国を米国と中国の間で起こり得る紛争が始まるための一種の『足がかり』へと一変させた。今日、NATOが北大西洋の安全保障だけでなく、太平洋の安全保障もますます案じていると言われているのはそのためだ。
その懸念の結果、インド太平洋戦略が策定され、さらに一部のNATO加盟国は中国沖の南シナ海でパトロールを開始することを約束した。このような、インド太平洋地域におけるグローバルプレイヤーであることを宣言しようとする西側の軍事ブロックの試みは、実際のところ、なにか新しいものである。このプロセスに日本が積極的に加わっているのもそうだ。日本はワシントン直属の米国の同盟国から、北大西洋の西側同盟全体のパートナーへと徐々に変わりつつある。したがって、太平洋における対立の度合いは計画通りに高まっている。そのため中国の指導部はこれをすでに地域の緊張を高める米国とNATOの具体的な計画として認識しているのだ」
アレクサンドル・ロマノフ
アジア太平洋研究センターの所長
したがって、中国大使館の今回の談話は、起こり得る米中衝突から距離を置くようにという日本への警告とみなすべきだ。なぜなら、対立の度合いは明らかに増しているが、日本と韓国の指導部にはこの事態の重大性を評価するのが難しいからだ。ロマノフ氏はさらに次のように続けている。
「中国はこれまで日本や米国、また概して西側との経済関係の発展に強い関心を持っていた。しかし日本は今回、ハイテク製品の対中輸出に追加制限を課すと発表した。したがって、各国の経済的相互依存は崩壊し始め、逆にこれらの国の軍事衝突の危険性は増大している。
一方、南シナ海あるいは東シナ海で深刻な米中対立が発生した場合、まさに西側の軍事同盟の直接的な軍事関与は大幅に制限される可能性がある。それは、大半のNATO加盟国はアジア太平洋地域に派遣するための大規模な海軍力を持っていないからだ。
だから中国政府はNATOの活動に日本と韓国が加わることにこれほどの注意を払っているのだ。中国政府の懸念の度合いは今日、西側諸国による中国封じ込めと遮断の脅威が原因ではるかに高まっている。そのため日本は、これに対してもっと責任ある態度を取るべきだ。なぜなら中国はすでに現在、その懸念を表明するだけでなく、(自国の安全保障に関する)特定の脅威に対応する用意ができているからだ」
アレクサンドル・ロマノフ
アジア太平洋研究センターの所長
互いの懸念はより危険な段階、つまり対立し合う段階に移行した。そこで最も重要な役割を演じているのが米中対立だ。しかし、日本にとって重要なのは、日本は地理的に米国よりもはるかに中国に近いということだ。
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したがって、ロマノフ氏は、台湾周辺で本格的な「激しい紛争」が起こった場合、その紛争に(米国側として)参加したいという日本の願望は、米国人よりも日本人にとってはるかに高くつく恐れがあると指摘している。同氏は次のような見解を示している。
「アジア諸国は現在、そのロシア恐怖症が米国の政策との連帯へ向かわせた東欧諸国と同じ道をたどっている。彼らは常にそのロシアとの対立において米国への完全な依存に立脚しているため、彼らには国の政治を独自に行うための駆け引きというものがない。似たようなことが現在、日本でも起こっている」
アレクサンドル・ロマノフ
アジア太平洋研究センターの所長
日本政府は、米政府の方針に従えば日本は経済的にも政治的にも得をすると考えている。それは第一に、安全保障分野においてだ。一方、米国とNATOはアジアで中国との現実の紛争により明確に近づいており、それは「地域、さらには世界の安全保障に破壊的要因もたらす」だけである。
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