劇場の遺跡が見つかったのはバチカン市国の東側。2020年、この場所でホテルの建設計画が持ち上がり、土地の調査のために考古学者らが招かれた。その結果、建物の遺跡が見つかり、それが学者らの大きな関心を集めたため、大がかりな発掘作業を行うことが決まり、ホテル建設は延期となった。
発掘では建物の廃墟に投げ込まれた夥しい数の遺物が発見され、中世の見事な装飾のガラスの茶碗、象牙の数珠の一部、台所用品、貨幣、象牙製の櫛の他、楽器までが多数見つかった。また劇場には建築上の意匠で凝らされ、豪華な大理石の円柱や金箔で装飾された漆喰までが見つかり、考古学者を驚かせた。
発掘で発見された遺物
© AP Photo / Andrew Medichini
公式筋は遺跡は「稀に見る」大発見で、皇帝ネロ時代をも含めた帝国時代から15世紀までのローマの歴史をより詳しく知る上で大きな手がかりになると指摘している。ネロは古代ローマの皇帝の中で悪名の高さで有名。言い伝えではローマに火を放つよう命じ、燃え盛る町の様子を郊外のヴィラから楽しみながら、ヴァイオリンを弾いていたと言われている。こうした恐ろしい性格の反面、音楽と芸術を愛し、劇場で演ずるのが好きだったともいわれている。
発掘作業が終了した後は遺跡は再び埋めもどされ、発見された遺物は博物館に送られる。
皇帝ネロの帝国劇場
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