ハウゼン氏の話によれば、ウクライナ軍の反転攻勢開始後、最初の1週間だけで欧米が供与した戦車の20%が失われた。大損失を出したウクライナ軍は戦術を変え、今度はロシア軍の陣地へ集中砲撃をかけ、同時に歩兵隊による陣地突破に重きを置いた。
ハウゼン氏はこうした戦法の本質について、敵の防衛の欠損部を探すことにあると説明している。守りの弱い部分を見つけておき、攻撃の際に機械化部隊を投入するやり方だ。だがウクライナ軍は、未だにロシアの防衛線の一番外側でさえ突破できていない。ハウゼン氏によれば、ロシアの防衛線はところによっては5重にもなって築かれ、30‐40キロの深部まで守られているため、反攻開始からウクライナ軍が取り返した領土はロシア軍が占める500分の1にも満たない。
「今の争点は、双方のうちどちらが今の消耗戦の速度に持ちこたえることができるかだけだ」ハウゼン氏はこう語る。ハウゼン氏はL’Echo紙に対して、ウクライナ軍が莫大な数の人員を失ったこと、またウクライナの砲兵隊が1日に消費する砲弾8000発は米国の軍需産業が1か月に製造する数量の3分の1にもあたることに注意を喚起した。ハウゼン氏は2023年秋までには弾薬、ウクライナ軍の人員ともに不足する事態になると危惧している。
しかもロシアの人口はウクライナの2倍、ロシア経済も実際は欧米が予想したようもはるかに堅牢だったことが明らかになった。加えて、ロシア軍には2023年の年頭から現在までに少なくとも23万人が新たに入隊している。ハウゼン氏はこれらをふまえた場合、ロシアはあと2,3年はこの状態を余裕で維持できるが、これに比べてウクライナは西側からの注入に完全に頼り切っており、注入する側の欧米はある瞬間、干からびる恐れがあると危惧感を表している。ハウゼン氏は、米国社会のウクライナ支援機運は目立って下降線をたどっており、しかも、欧米の軍需製造ポテンシャルは弱っているという。「これらすべてを加味した場合、ウクライナの明日は安泰とは言い難い。良くても我々は現状維持か、紛争の凍結に向かって進むだろう。ただし、いずれの側かが決定的な勝利を収める時は2023年中にも2024年中にも来ない」
スプートニクは、米国の軍事専門家らも特別軍事作戦におけるウクライナの勝利には疑問を呈しており、前線ではウクライナ軍の反転攻勢が失敗し、前ロシアが主導権を握ったという共通の見解を持っていると報じている。
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