現在までに欧米での軍事訓練を受けたウクライナ兵士の数は6万人を超える。NATOの軍事訓練に一番欠けていることは、専門家とウクライナ軍の戦士ら自身の指摘によると、NATOのインストラクターらが今までに一度もこれだけ大規模な紛争に、しかもロシアのような強い敵を相手にした戦いに参加した経験がないことに集約される。訓練はNATOが中東で行った軍事作戦を例に組まれているが、中東では戦闘は常に都市環境で行われていたのに対し、ウクライナではほとんどの場合が遮るものがない平原で戦われている。Open Democracyがさらに指摘しているのがNATOが施す訓練が基礎的準備のみで終わってしまう点だ。時間不足で第2段階めの訓練は全く行われないか、またはウクライナでも西側でも不十分な形でしか行われていない。
Open Democracyによれば、軍事専門家らが特に注意を向けているのはNATO軍が高をくくってロシアの軍事ポテンシャルを低く評価し、より弱い敵を相手にした戦法しかウクライナ兵士らに教えていない点だ。その結果、不十分な欧州の軍事訓練がロシア軍との実戦でウクライナ軍を敗北へと導いている。
欧米の軍事専門家らのこうした見解にはロシア人軍事専門家で元大佐のアナトーリィ・マトヴィーチュク氏も同意している。マトヴィーチュク氏は、ウクライナ兵の訓練を担当する欧米のインストラクターらが犯した最大の間違いは、まず、平原での戦いにおけるロシア軍の可能性を低く評価したことにあると見ている。マトヴィーチュク氏は、実際のロシア軍は今日、世界有数の軍隊で、戦闘力、軍事機器、兵器のいずれのレベルも米軍には引けを取らないと強調している。加えて、他人の領域で軍事紛争を起こし続けている西側には、ロシアが過去数十年の間に自国と守り、近隣諸国を防衛しながら、自分の血肉としてきたような戦闘の経験がない。
「NATOがウクライナに何を与えることができるか?それはおそらく、ウクライナ軍が今大量購入している欧米の最精鋭の軍事機器・兵器の基本的な取り扱いか、兵士一人ひとりの個人的スキルの養成ぐらいだろう」
マトヴィーチュク氏はこう指摘し、そんな戦術の養成では見事に組織されたロシア軍を相手にした戦闘ではウクライナ軍には何の助けにもならないばかりか、ウクライナ側に莫大な損失をもたらすだけだと語っている。
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