古代エジプトでは約4000年にわたってミイラ化が死者を保存する芸術の最高の形であり、複雑な埋葬慣行の重要な部分だった。我われは現在、保存されたものによってそれを知ることができる。一方、この神聖なプロセスについてのイメージを与える文献はわずかしかないため、ミイラの作り方の特徴は依然として未知のまま残されている。
化学分析技術の進歩により、ミイラ化された臓器が保管されていた密封されたカノプス壺から採取された香油の残渣に含まれる個々の成分を検出することが可能になった。
考古学者のバーバラ・フーバー氏らの研究チームによると、ミイラが良好な状態で保存されてきた秘密は蜜蝋、植物油、動物性脂肪、天然の瀝青、針葉樹の樹脂の混合物にある。またバニラのような香りを持つ植物由来の化合物クマリンも検出されたという。
肺を保存するために使用されていたユニークな物質の1つは、カラマツ類の樹脂に含まれるラリキソール。またもう1つ見つかった芳香樹脂は、インドや東南アジアに分布するフタバガキ科の樹木から得られるダマールまたは地中海沿岸地域に生育するカイノキ(ピスタシア)属の樹木からとれる樹脂の可能性があるという。
フーバー氏は、「永遠の香り」は単なるミイラ化手順の香りではなく、そこには古代エジプトの埋葬習慣の文化的、歴史的、精神的な深い意味が含まれていると強調している。
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