ウクライナ・東欧諸国の穀物戦争
問題の発端は2022年6月に遡る。EUはウクライナからの輸入関税の1年間の撤廃を決定。これを機に、安価なウクライナ産農産物がEUに大量流入し、特に国境を接するポーランドなどの東欧5カ国の農家は壊滅的な打撃を被った。
EUは今年5月、ポーランド、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア、ブルガリアの5カ国への一部のウクライナ産農産物の禁輸措置を発動。9月15日が期限で、延長されず撤廃されたが、ポーランド、ハンガリー、スロバキアの3カ国はEUの禁輸解除後も独自の禁輸措置を続けた。
これを受け、ウクライナは18日、3カ国を相手取り世界貿易機関(WTO)に提訴。ポーランドの農産物の禁輸といった対抗措置を導入することも発表している。
支援停止ちらつかせ、外交カードに
こうしたなか、シンコフスキ=ヴェル=センクEU担当相は、同国のPAP通信のインタビューのなかで、ウクライナ支援の今後のあり方について語った。
「我々はこれからもウクライナを支援していきたいと思っているが、そのためには国民の支持が必須だ。それがなければ、これまでやってきたようにウクライナを支援するのは難しくなるだろう」
また、ウクライナ側の措置はポーランドとウクライナの関係に否定的な影響を与えると批判。これにより、ポーランド国民のウクライナへの軍事・財政支援の意欲も大幅に低下してきていると指摘した。
溺れるウクライナ
ポーランドのドゥダ大統領は、国連総会の場でウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談を予定していたが直前で中止になった。理由について「他の会議のスケジュールが変わったため」としているが、ロイター通信によると、一般討論演説の後の記者会見でドゥダ大統領は、農産物問題に関するウクライナへの不満を口にした。
「溺れる者はとても危険だ。なぜなら他人を巻き添えにするからだ。救助者さえも溺れさせるかもしれない」
ドゥダ大統領によると、厳しい状況にあるウクライナは「掴めるものには何にでも掴まろうとする」という。だが、「溺れる者が他人を巻き込めば、その者は助けを受けられなくなる」ため、ポーランドは自らの国益を守るために行動すると話した。
また、「ウクライナは我々から支援を受け取っており、ポーランドがウクライナにとって経由国であることを覚えておいたほうがいい」と発言し、立場の違いを明確にした。