エウロパの地殻上に凍った二酸化炭素の痕跡があることはかなり前から明らかにされていた。二酸化炭素に含まれる炭素は、タンパク質、脂肪、炭水化物の合成に必要なため、生命にとって欠かせない。ところが情報の不足から、二酸化炭素がどこから現れたのか、隕石によって宇宙空間からもたらされたのか、惑星内部に源があるのか、あるいは木星の磁気圏との相互作用の結果、発生したのかはわからないままだった。
エウロパの表面について、米カリフォルニア工科大学とゴダード宇宙飛行センターの2つの研究チームが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で得られたデータを用い、独自の研究を行った。チームらがエウロパ表面の二酸化炭素の分布マップを作製し、エウロパの地形図と比較したところ、最高濃度の二酸化炭素が観測されたのが、幅1800kmのタラ・レジオ地域(Tara Regio)だったことがわかった。タラ・レジオ地域は比較的若い地質学的地域で、ここには氷床の窪地、尾根、亀裂がある。
こうした地形がなぜ形成されるかは、はっきりは分かっていない。海面まで上昇してきた暖かい海水が氷を溶かし、それが再凍結した結果、新たな凹凸が形成されるという仮説もたてられている。つまり、氷河下の海と地殻表面との間で物質の交換が行われている。二酸化炭素が同地域に最も多く存在するということは、その起源が海洋であることを示している。
両方のチームの研究結果は、二酸化炭素がエウロパの地表に到達したのは地殻下に存在する深海からという結論に達した。
エウロパの氷床下の海が、既知の生命体の発生に適しているか、否かをは、木星とエウロパに向けて行われる2つの宇宙ミッションが解明する可能性がある。1つはJUICE(JUpiter ICy moons Explorer、木星氷衛星探査計画)で探査機はすでに2023年4月に打ち上げられている。もうひとつはNASAのエウロパ・クリッパーで、来年2024年10月に打上げが予定されている。
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