H3初号機の打ち上げは3月7日、鹿児島県の種子島宇宙センターで行われた。2段目のロケットが点火せず、破壊信号が送られ失敗となった。これまでの調査でJAXAは、2段目のロケットが点火しなかった技術的要因は、エキサイタと呼ばれる電力回路内で起こったショートや過電流だとする報告書をまとめていた。
JAXAは今月25日に発表した報告書で、一連の不具合が発生した原因が、旧型で打ち上げ成功率が高いH2の過去の実績を過信し、確認を怠ったことにあると指摘している。
「H2以来の実績を重視したことや、製造後の運用段階で状態(設計上狭い部品間の隙間)が変わらないと考えたため、製造・検査や設計に対する対策を行うことがなかった」
「基本的な設計および製造工程がH2以前に確立され、運用し続けている電気系機器をH3に適用する際に、部品適合性評価に不足が無いかの確認がなかった」
このうえでJAXAは対策として、今回明らかになった部品系統に改善を加えることや、ロケットから地上へ送るデータを増やし不具合時の対応や原因究明を容易にすること、幅広い専門家の知見を取り入れて電気系統の開発を強化することなどの方針を示した。
新型ロケットH3は、JAXAと三菱重工業が9年前から現在の日本の主力ロケットH2Aの後継機として開発しており、総開発費2000億円余りの国家プロジェクトとして進められている。打ち上げ能力はH2Aの1.3倍に、コストは半減するとしている。
一方、H2Aロケットはこれまでに47回中46回の打ち上げに成功している。原型のH2(7回中5回成功)、姉妹型のH2B(9回中失敗なし)を加えても95パーセントの成功率を誇る。直近では今月7日、日本初の月面着陸を目指す月探査機などを搭載したH2Aロケット47号機の打ち上げが行われた。
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