西側諸国によるウクライナへの兵器供与

【解説】エイブラムス戦車の「アキレス腱」 ロシアはウクライナで米戦車とどうやって戦うのか

米国防総省がウクライナ政府に約束していたM1 エイブラムス米主力戦車31両のうち、第一陣が25日、ウクライナに到着した。スプートニクは、新たに供与された西側の「奇跡の兵器」に対抗するためにロシアが保有する軍事技術的手段を解明した。
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エイブラムスは、ウクライナに到着した北大西洋条約機構(NATO)の「3大戦車」のうちの1つ。すでに独主力戦車「レオパルト」と英主力戦車「チャレンジャー2」はウクライナに到着し、前線に登場したが、その無敵伝説を証明することはできなかった。そして今回、米国のエイブラムスが「超兵器」という称号の証明に挑む。

ロシアが「エイブラムス」と戦うのに役立つ4つの要素

1つ目は、エイブラムスは重量が重いため、ロシア軍が敷き詰めて構築した地雷原を突破することができない。ウクライナ軍の装甲車両による攻撃の多くは、地雷原と「竜の歯」と呼ばれる防御用障害物によって阻まれた。
2つ目に、砲や航空機でロシアは質量ともに優位にあるため、ロシア軍は攻撃ヘリコプター「Ka-52」や「Mi-28」を使ってウクライナの戦車を狙うことができる。これらのヘリコプターには長距離レーザー誘導ミサイルが搭載されており、ウクライナの防空システムの働きを困難、さらには不可能にしている。
3つ目に、近代化されたロシアの戦車「T-72B」「T-72B3M」「T-80」「T-90M」などのシリーズは、技術的特性に関して、旧ソ連時代のウクライナの装甲車両やNATOの主力戦車よりも優れている。さらにロシアの戦車は数でも上回っているほか、長距離兵器を備えており、GPS信号を妨害して敵の精密誘導兵器や戦闘ドローンを混乱させることもできる。
4つ目に、ロシアの歩兵は「エイブラムス」を含むNATOの最新世代の主力戦車を破壊するために特別に設計された「コルネット」などの携行式対戦車ミサイルシステムで武装している。
戦車エイブラムス到着も ウクライナ高官「戦況を変えることにはならない」=米報道

「エイブラムス」の弱点はどこにあるのか?

ウクライナ向けの「エイブラムス」は、秘密保持の理由から劣化ウランを使用した強力な装甲が取り外されているため、米軍の基準を満たしていない。
ロシア軍元大佐のセルゲイ・スヴォーロフ氏によると、ウクライナ向けの「エイブラムス」は携帯式対戦車手榴弾発射器RPG-7をはじめとした、ロシアが保有するあらゆる対戦車システムに対して脆弱になる。同氏は、エイブラムスにとって特に危険なのは、ロシアの戦車に搭載されている運動エネルギーの発射体にあると考えている。スヴォーロフ氏によると、これらは重量70トンの「エイブラムス」の480mmの前部装甲を貫通することができるという。同氏はまた、短砲身や、ほこりが入り込むとすぐに故障するガスタービンエンジンも弱点だと指摘している。スヴォーロフ氏は、ウクライナの黒い土と困難な気象条件では、「エイブラムス」のその重さが「アキレス腱」(致命的な弱点)になると考えている。
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