【視点】「米国に100%頼ってはいけない」 日中韓協議の目的とは

韓国のソウルで9月末、日中韓高級事務レベル協議が開催され、3カ国協力を「再活性化」させる契機となったと評価された。協議には、日本から船越健裕外務審議官が出席した。注目されるのは、協議が米国抜きで行われたことだ。一方、米政府は最近、米大統領山荘キャンプデービッドで日本と韓国の首脳を同じテーブルに着かせるために多大な努力を払った。スプートニクは、そのアジアの同盟国である日本と韓国が中国と3カ国協議を行うにあたり、なぜ米国は今回「舞台袖」に留まったのか、また同協議における日本と韓国の目的は何だったのかについて専門家の意見を聞いた。
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中国現代アジア研究所日本研究センター長のワレリー・キスタノフ氏によると、今回の協議にはしっかりした根拠のある「米国的要因」は存在しないという見方を示している。

「おそらく、今回の協議は当初から『純粋なアジア協議』として考えられていたと思われる。そこに米国の代表者がいなかった理由は、キャンプデービッドに中国の指導者である習近平氏がいなかったのと同じだと解釈できる。キャンプデービッドでは最近、バイデン大統領と岸田首相及び韓国の尹錫悦大統領の三者による会談が行われた。会談の目的は、米国の後援の下でアジアに反中国のミニ同盟をつくることだった。

一方、今回の日中韓高級事務レベル協議は、もう1つのトロイカの形成を示唆した。今回はアジア協議であり、そこには米国に代わって中国が参加した。その理由は明らかだ。日本と韓国は中国政府との協力を維持しようとしているからだ。なぜなら日本では、頻繁ではないが、米国に100%頼ってはいけないという主張も聞かれるからだ」

ワレリー・キスタノフ
中国現代アジア研究所日本研究センター長
【視点】キャンプデービッドで開かれた会談 偶然の会合か新たな同盟か?
その論拠を、トランプ政権時の米国による対日安全保障に対する疑問が示している。キスタノフ氏は続けて次のように語っている。
「日本人は、自国にとって不利な状況になった場合に米国が同盟国を見捨てる様子を目にした。米軍のアフガニスタン撤退は日本人に非常に悪い印象を与えた。撤退は突然行われた。つまり、全く予想外の出来事だった。米国は運命のなすがままに、事実上、タリバンのなすがままに、アフガニスタンにいる自分たちの『被後見人』たちを見捨てた。したがって、日本人はおそらく現在、米国との安全保障条約や米国との戦略的同盟は良いことではあるが、中国を含む他国との関係における国益も忘れてはいけないと考えている」
ワレリー・キスタノフ
中国現代アジア研究所日本研究センター長
さらに米国は日本から遠く離れており、中国は韓国と同じく隣国であるため非常に近い。キスタノフ氏は、したがって日本政府と韓国政府は、それがまだ可能であるならば、中国と「仲良く」なることを望んでいると指摘している。

「その目的は、現在米国と中国の間で繰り広げられているグローバルかつ苛酷な争いによる悪影響を回避することだ。また日本、韓国、中国には独自の経済的利益がある。例えば、彼らは独自の自由貿易地域の創設に賛成しており、これがうまくいった場合には、3か国に素晴らしい経済効果がもたらされる。そして彼らの強力な経済はアジアでその影響力を高めるだろう。

一方、日本と中国の気まずくなった関係は、事実上、今日、この目標に向かう道に『石のように横たわっている』。この関係は最近、福島第1原子力発電所からの処理水放出の影響でさらに悪化した。したがって、日本も韓国と同様に現在、中国との関係正常化を目指している。また中国は、日本と韓国を反中国のキャンプデービッド路線から離脱させ、自国側に引き入れることに関心を持っている。これが、中国がこの協議への参加に同意した主な理由だ。また、中国の習近平国家主席が近いうちに日本と韓国を訪問する可能性もある」

ワレリー・キスタノフ
中国現代アジア研究所日本研究センター長
【視点】安保理首脳級会合での岸田氏のスピーチ 日本は拒否権乱用を批判して、自分たちの利益を促進している?
これは日中韓3か国の関係に新たな刺激を与えることになる。したがって、ソウルで行われた協議は、反中国を目的としたキャンプデービッドの「トロイカ」とは別のトロイカが出現し、この2つのトロイカの間では容易ならぬ競争が生じていることを示唆している。なお、韓国はすでに年内の日中韓3カ国の首脳会談開催への支持を表明した。
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