ホワイトハウスは9月、2024年会計年度(2023年10月1日~)のウクライナ支援予算として議会に対し240億ドルを請求。ウクライナ関連を含む政府予算を巡って激しい攻防を続けていた与党・民主党と野党・共和党の両党は、「政府閉鎖(シャットダウン)」を回避するため、予算措置を45日間延長する「つなぎ予算」の可決で合意した。
だが、共和党強硬派の要求でウクライナ予算は除外された。「つなぎ予算」が底を尽きる11月17日までには再び与野党の駆け引きがあるとみられ、当初ホワイトハウスが求めていた240億ドルのうち、どれだけ通るかは不透明だ。
ウクライナの2023年の国家予算は1兆3300億フリブニャで、360億ドル(5兆4000億円)相当となっている。つまり、現時点で失われたウクライナの「収入」は国家予算の約3分の2、8ヶ月分にあたる計算となる。米支援の停止は国家財政の破綻だけではなく、米国が供与を表明、または検討している戦車エイブラムス、戦闘機F16、追加の砲弾などの供給が完全にストップすることを意味する。
議長に身内から解任動議
FOXニュースによると、下院共和党強硬派のマット・ゲイツ議員は、同党所属のケビン・マッカーシー下院議長に対する解任動議を提出。「つなぎ予算」成立のために民主党と妥協したことを非難している。共和党内の内輪もめ、与野党の対立などでホワイトハウスは身動きがとれない状態となっている。
EUでも足並み乱れ
これまで西側諸国の先頭に立って支援を指揮してきたのにも関わらず、一気に減速した米国の体たらくに、欧州の開いた口が塞がらない。EUのジョゼフ・ボレル外相は、米議会の支援除外に「驚いており、遺憾に思う」と述べている。
このタイミングでEUはキエフ(キーウ)で域外初となる加盟国首脳会談を開催。ウクライナへの追加支援を発表し、支援継続への結束を演出した。だが、EUも一枚岩ではない。今回の会談には、穀物問題でウクライナと対立を深めるハンガリーやポーランドの外相は欠席。また、このごろスロバキアではウクライナ支援停止を訴える野党が総選挙で第1党となった。
一方、英紙フィナンシャル・タイムズは、EUがウクライナ支援増額へのハンガリーの支持を取り付けるために、ハンガリーに対する補助金凍結の解除を検討していると報じた。この補助金は昨年12月、ハンガリーが人権侵害や憲法違反を行ったなどとしてEUが交付を停止していた。ハンガリーとしてはウクライナ支援をだしにしてEUの譲歩を引き出したい考えだ。
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