米国、核実験場で爆発伴う「探知テスト」実施 露下院がCTBT批准撤回の日

米エネルギー省は、18日にネバダ核実験場で低出力核兵器の探知を目的とした、化学爆発を伴う実験を行ったと発表した。奇しくもこの日は、露下院が包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准撤回を承認した日だった。今回のテストは「核実験」ではないものの、核保有国間の対立が深まるなか、更なる緊張激化や不信感の増幅に繋がるリスクが懸念されている。
この記事をSputnikで読む

米、核の脅威低減が目的と強調

「ネバダ国家安全保障施設(編注:ネバダ核実験場)のチームは、世界中の低出力核爆発を探知する米国の能力を向上させる目的で、地下トンネルでの化学爆発実験を行った」

米エネルギー省
同省によると、今回の実験では「強力な化学爆発物と放射性トレーサー」が使用された。発表によれば核爆弾や核爆発を伴うものではないため、国際法や条約に抵触するものではない。
実験によって予測される新たな核爆発モデルとその検出方法を検証することができ、他国が低出力の核実験を行った際のより正確な観測につながるとしている。また、「核不拡散という米国の目標を前進させ、世界的な核の脅威を低減させる」と強調し、あくまでも平和目的の実験だと説明している。
実験が行われたエリア12内の地下トンネル

核軍拡競争再来の懸念

だが、実験が行われたのが露下院がCTBTの批准を取り消す法案を可決した日と重なったことは注目に値する。
米ブルームバーグ通信は、今回のような核関連実験が誤解され、ロシアや他の核保有国との緊張や軍拡競争がエスカレートする懸念があると伝えている。また、同誌は「この実験が核実験でないと検証する方法はない」とする専門家の指摘も紹介している。
実際に米国は核戦力の増強に舵を切っている。米議会超党派委員会は12日、大陸間弾道ミサイルなどを含む「核の三本柱」の刷新・拡大の必要性を訴える報告書をまとめた。そこでは、米国の核戦力が「ロシアおよび中国との紛争」への準備ができておらず、「量的・構造的な変化」が必須だと指摘されている。
【解説】時には決意を見せるのも必要 ロシア下院、CTBT批准撤回を承認

ロシアのCTBT批准撤回

ロシア下院は18日、CTBTの批准を取り消す法案を全会一致で可決した。今後、上院の承認を経たうえで大統領が署名して発効する。
CTBTは宇宙空間,大気圏内水中,地下を含むあらゆる核実験を禁止する条約で、1996年に署名された。ロシアは2000年に批准したが、米国などの核保有国を含む高い原子力技術を持つ44発効要件国の一部が批准しておらず、未発効となっている。
ロシアのプーチン大統領はこれまでに、条約を批准しない米国を引き合いに出し、ロシアのCTBT批准取り消しの可能性に言及していた。一方、これは条約からの脱退ではなく、ペスコフ大統領報道官も「批准の撤回が直ちに核実験を行う意志を示すものではない」としている。
関連ニュース
【図説】ついに実戦配備 ロシア最新鋭ICBM「サルマト」
【視点】核戦争の脅威は増大しているのか 空母「ロナルド・レーガン」を中核とする空母打撃群が釜山に停泊
コメント