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【解説】時には決意を見せるのも必要 ロシア下院、CTBT批准撤回を承認
【解説】時には決意を見せるのも必要 ロシア下院、CTBT批准撤回を承認
Sputnik 日本
... 2023年10月18日, Sputnik 日本
2023-10-18T20:57+0900
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2つの核実験禁止条約核実験は2つの国際条約で禁止されている。最初の条約は、1963年8月5日にソ連、米国、英国によって調印された「(部分的核実験禁止条約(PTBT)」である。この条約は1963年10月10日に発効し、100カ国以上が締約国となった。現在核兵器を保有している国のうち、中国、北朝鮮、フランスは署名も批准もしていない。1963年の条約では、地下核実験や平和目的の核爆発は禁止されていなかった。ソ連は1965年から1988年まで、平和目的で124回の地下核爆発を行った。それらは、石油生産の強化、制御不能なガス噴射の停止、深部地震探査、消火のために実施された。1966年9月30日、ウズベキスタンのウルタ・ブラク油田で、核爆発によって燃焼中のガスフレアが消火された。高さ120メートルのガスフレアは約3年間燃え続けていた。地下核爆発の後、ガスフレアは1分足らずで消滅した。1996年9月10日、国連総会でこの記事のテーマである2番目の文書、「包括的核実験禁止条約(CTBT)」が採択された。日本外務省によると、この条約には185カ国が署名し、170カ国が批准している。しかし、この条約は核兵器や原子力技術を持つ44カ国の批准が必要だったため、発効には至っていない。そのうち、署名も批准もしていない国は、インド、北朝鮮、パキスタン、署名はしたが批准はしていない国は、イラン、イスラエル、中国、米国である。ロシアは1996年9月24日に署名し、2000年6月30日に批准した。一部の核保有国は批准していないにもかかわらず、この条約を事実上履行している。米国は1992年9月23日、中国は1996年7月29日に最後の核実験を行った。1996年以降、核実験を行ったのは条約未署名国のみである。こうした状況を考慮すれば、ロシアがCTBTの批准を取りやめたからといって、直ちに新たな核実験に踏み切るということにはならない。また核実験の為には、まず同条約への署名を撤回する必要もある。核実験の必要性核兵器の実験は現在も行われているが、核爆発は起こっていない。この実験では、自動化と起爆システムのチェックが行われ、プルトニウムやウランの炉心の代わりに金属製のダミーが使用される。起爆後の変形によって、このシステムで核爆発が起こるかどうかがかなり正確にわかる。世界中ではこれまでに2000回以上の核実験が行われ、核弾頭の設計には多くの経験が蓄積されている。また、核兵器の戦闘準備態勢をチェックするために、コンピューターによる核爆発のシミュレーションが行われているが、スーパーコンピューターの登場により、その精度は非常に高くなっている。最近では実際の核実験は、インド、パキスタン、北朝鮮によって行われた。彼らは1990年代に核兵器の製造を始めたばかりで、米国やロシアが持っていたような経験を持っていなかった。彼らは最終的に核爆弾の性能をテストするために実際の爆発を必要とした。一方、従来の核兵器保有国でも、アメリシウム242のような、これまで実験されたことのない同位体に基づく新しい設計を用いる場合、実際の核実験の技術的必要性が生じる可能性はある。核実験には政治的な必要性もある。第一に冷戦時代には、核爆発実験によってある国が武器庫に保有している、核兵器の種類と威力を確認することができた。これは現在まで有効だ。北朝鮮が核兵器と水素爆弾を保有していることは、実験によって明らかになっている。第二に、核実験はしばしば、自国の持つ兵器の中で最も強力なものを使用するという決意を示すものであり、敵対国をある面で威嚇し、譲歩や交渉を迫るものであった。ソ連における最後の核実験から30年以上経った今、ロシアは再び核兵器使用の決意を示す必要に迫られている。その前提となっているのは、米国とその同盟国の強い敵意であり、米議会ではロシアと中国との同時戦争を準備する提案がなされている。世界規模の核戦争がもたらす破壊力米議会に超党派で設置された戦略態勢委員会の報告書が提出された。その主な結論は、ロシアと中国を同時に封じ込め、打ち負かす準備をする必要があり、そのためには米国が核兵器を増強し、近代化させる必要があるというものだった。米国防総省は、中国は2035年までに約1500発の核弾頭を保有すると予測している。現在の米国の政治指導者の方針により、ロシアと中国が同時かつ協調的に、そして標的を分担して、核戦争に突入した場合、米国は壊滅的な打撃を受けかねない。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2022年の米国の配備核弾頭は1770発、ロシアは1674発である。ロシアは2023年5月以降、核戦力に関するデータを公表していないため、これが最新の情報となる。中国は核戦力に関する情報を全く公表していない。核弾頭の標的が、敵の軍事的・経済的潜在力を最も効果的に弱体化させる石油・ガス・電力施設であると仮定すると、ロシアは大規模な核攻撃によって、年間9億トン以上の石油製品を生産する主要製油所135カ所、港湾の石油ターミナル60カ所、米国の電力の74.5パーセントを生産する発電所2266カ所のうち大型発電所1449カ所、合計約570ギガワット、大型発電所の64パーセントを破壊することができる。ロシアが配備している核弾頭1674発に、中国が配備している核弾頭1500発を加えると、3174個になる。ロシアと中国による共同核攻撃は、米国の石油精製産業と大規模な電力産業を一掃し、米国を経済崩壊の瀬戸際に追い込む可能性がある。しかも、日本を含めた米国の同盟国や世界中の米軍基地に対する攻撃のための弾薬はまだ残る。NATO内の米国の同盟国は、ロシアの戦術核攻撃の射程内にあり、その兵器は大陸間弾道ミサイルなど戦略的運搬手段に配備された弾頭数よりも多い。それだけではない。北朝鮮の指導者である金正恩氏は、ロシアと中国が大規模な攻撃を開始するという知らせを受けるやいなや、韓国、日本とその米軍基地を攻撃するために、即座にすべての核兵器を起動させ、韓国への攻撃を開始することは間違いない。北朝鮮も共同攻撃の計画に関与する可能性は否定できない。核戦争計画の観点からすれば、これは論理的なことである。米国がロシアと中国を同時に攻撃できるだけの核弾頭を持っているかどうかは大きな疑問である。これらは非常に大雑把な予測であり、イメージである。しかし、世界核戦争がどれほど破壊的なものかを示している。その影響は、例外なくすべての人に及ぶ。米国は国際問題へのアプローチを変え、他国の意見を考慮することを学ぶべき時なのかもしれない。ロシアは、1996年のCTBTの批准取り消すことで、現在の容認できない政策を追求する米国に警告を発する第一歩を踏み出したにすぎない。次の段階は、1996年の条約からの脱退であり、それに続く地下核実験である。その次は1963年の条約からの脱退、そして大気圏核実験であり、そのあとはおそらく警告は意味をなさなくなるだろう。だが、米国にはまだ考える時間がある。関連ニュース
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ロシア, 核兵器, 核実験, 核問題, 米国, 中国, 北朝鮮, オピニオン, 軍事
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【解説】時には決意を見せるのも必要 ロシア下院、CTBT批准撤回を承認
ロシア下院は18日、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を取り消す法案を全会一致で可決した。今後、上院の承認を経たうえで大統領が署名して発効する。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は今月5日、条約を批准しない米国を引き合いに出し、ロシアのCTBT批准取り消しの可能性に言及していた。一方、これは条約からの脱退ではなく、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官も「批准の撤回が直ちに核実験を行う意志を示すものではない」としている。
最初の条約は、1963年8月5日にソ連、米国、英国によって調印された
「(部分的核実験禁止条約(PTBT)」である。この条約は1963年10月10日に発効し、100カ国以上が締約国となった。現在核兵器を保有している国のうち、中国、北朝鮮、フランスは署名も批准もしていない。1963年の条約では、地下核実験や平和目的の核爆発は禁止されていなかった。ソ連は1965年から1988年まで、平和目的で124回の地下核爆発を行った。それらは、石油生産の強化、制御不能なガス噴射の停止、深部地震探査、消火のために実施された。1966年9月30日、ウズベキスタンのウルタ・ブラク油田で、核爆発によって燃焼中のガスフレアが消火された。高さ120メートルのガスフレアは約3年間燃え続けていた。地下核爆発の後、ガスフレアは1分足らずで消滅した。
1996年9月10日、国連総会でこの記事のテーマである2番目の文書、
「包括的核実験禁止条約(CTBT)」が採択された。日本外務省によると、この条約には185カ国が署名し、170カ国が批准している。しかし、この条約は核兵器や原子力技術を持つ44カ国の批准が必要だったため、発効には至っていない。そのうち、署名も批准もしていない国は、インド、北朝鮮、パキスタン、署名はしたが批准はしていない国は、イラン、イスラエル、中国、米国である。ロシアは1996年9月24日に署名し、2000年6月30日に批准した。
一部の核保有国は批准していないにもかかわらず、この条約を事実上履行している。米国は1992年9月23日、中国は1996年7月29日に最後の核実験を行った。1996年以降、核実験を行ったのは条約未署名国のみである。
こうした状況を考慮すれば、ロシアがCTBTの批准を取りやめたからといって、直ちに新たな核実験に踏み切るということにはならない。また核実験の為には、まず同条約への署名を撤回する必要もある。
核兵器の実験は現在も行われているが、核爆発は起こっていない。この実験では、自動化と起爆システムのチェックが行われ、プルトニウムやウランの炉心の代わりに金属製のダミーが使用される。起爆後の変形によって、このシステムで核爆発が起こるかどうかがかなり正確にわかる。世界中ではこれまでに2000回以上の核実験が行われ、核弾頭の設計には多くの経験が蓄積されている。また、核兵器の戦闘準備態勢をチェックするために、コンピューターによる核爆発のシミュレーションが行われているが、スーパーコンピューターの登場により、その精度は非常に高くなっている。
最近では実際の核実験は、インド、パキスタン、北朝鮮によって行われた。彼らは1990年代に核兵器の製造を始めたばかりで、米国やロシアが持っていたような経験を持っていなかった。彼らは最終的に核爆弾の性能をテストするために実際の爆発を必要とした。
一方、従来の核兵器保有国でも、アメリシウム242のような、これまで実験されたことのない同位体に基づく新しい設計を用いる場合、実際の核実験の技術的必要性が生じる可能性はある。
第一に冷戦時代には、核爆発実験によってある国が武器庫に保有している、核兵器の種類と威力を確認することができた。これは現在まで有効だ。北朝鮮が核兵器と水素爆弾を保有していることは、実験によって明らかになっている。
第二に、核実験はしばしば、自国の持つ兵器の中で最も強力なものを使用するという決意を示すものであり、敵対国をある面で威嚇し、譲歩や交渉を迫るものであった。
ソ連における最後の核実験から30年以上経った今、ロシアは再び核兵器使用の決意を示す必要に迫られている。その前提となっているのは、米国とその同盟国の強い敵意であり、米議会ではロシアと中国との同時戦争を準備する提案がなされている。
米議会に超党派で設置された戦略態勢委員会の
報告書が提出された。その主な結論は、ロシアと中国を同時に封じ込め、打ち負かす準備をする必要があり、そのためには米国が核兵器を増強し、近代化させる必要があるというものだった。
米国防総省は、中国は2035年までに約1500発の核弾頭を保有すると予測している。現在の米国の政治指導者の方針により、ロシアと中国が同時かつ協調的に、そして標的を分担して、核戦争に突入した場合、米国は壊滅的な打撃を受けかねない。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2022年の米国の配備核弾頭は1770発、ロシアは1674発である。ロシアは2023年5月以降、核戦力に関するデータを公表していないため、これが最新の情報となる。中国は核戦力に関する情報を全く公表していない。
核弾頭の標的が、敵の軍事的・経済的潜在力を最も効果的に弱体化させる石油・ガス・電力施設であると仮定すると、ロシアは大規模な核攻撃によって、年間9億トン以上の石油製品を生産する主要製油所135カ所、港湾の石油ターミナル60カ所、米国の電力の74.5パーセントを生産する発電所2266カ所のうち大型発電所1449カ所、合計約570ギガワット、大型発電所の64パーセントを破壊することができる。
ロシアが配備している核弾頭1674発に、中国が配備している核弾頭1500発を加えると、3174個になる。ロシアと中国による共同核攻撃は、米国の石油精製産業と大規模な電力産業を一掃し、米国を経済崩壊の瀬戸際に追い込む可能性がある。しかも、日本を含めた米国の同盟国や世界中の米軍基地に対する攻撃のための弾薬はまだ残る。NATO内の米国の同盟国は、ロシアの戦術核攻撃の射程内にあり、その兵器は大陸間弾道ミサイルなど戦略的運搬手段に配備された弾頭数よりも多い。
それだけではない。北朝鮮の指導者である金正恩氏は、ロシアと中国が大規模な攻撃を開始するという知らせを受けるやいなや、韓国、日本とその米軍基地を攻撃するために、即座にすべての核兵器を起動させ、韓国への攻撃を開始することは間違いない。北朝鮮も共同攻撃の計画に関与する可能性は否定できない。核戦争計画の観点からすれば、これは論理的なことである。
米国がロシアと中国を同時に攻撃できるだけの核弾頭を持っているかどうかは大きな疑問である。これらは非常に大雑把な予測であり、イメージである。しかし、世界核戦争がどれほど破壊的なものかを示している。その影響は、例外なくすべての人に及ぶ。
米国は国際問題へのアプローチを変え、他国の意見を考慮することを学ぶべき時なのかもしれない。ロシアは、1996年のCTBTの批准取り消すことで、現在の容認できない政策を追求する米国に警告を発する第一歩を踏み出したにすぎない。次の段階は、1996年の条約からの脱退であり、それに続く地下核実験である。その次は1963年の条約からの脱退、そして大気圏核実験であり、そのあとはおそらく警告は意味をなさなくなるだろう。だが、米国にはまだ考える時間がある。