弾の速さは大きな利点
レールガンのアイデアは新しいものではない。レールガンの最初の特許申請は1901年にさかのぼる。このような大砲は、日本を含む第一次世界大戦中と第二次世界大戦中に試みられたが、失敗に終わった。技術者にレールガンの開発を促した主な理由のひとつは、火薬の初速が毎秒2000~2200メートルで、それ以上は出せないことだった。
レールガンにはこの欠点がなく、理論的には発射体は秒速10万メートルまで加速できる。比較のため、地球の軌道に入るための第一宇宙速度は秒速7910メートルであり、秒速16650メートルでは、発射体は地球と太陽の重力に勝ち、太陽系から宇宙空間に飛び去ることになる。
したがって、小さな弾丸でも高速を達成できるようになったことで、軍には、照準拡大も含めた射程距離の拡大、装甲貫通力の向上、一般的な打撃力など、戦術的・技術的に貴重な利点がもたらされた。
例えば、口径40ミリのスイスの高射砲「Bofors L60」は、古いが信頼性が高く、多くの戦場で使用されている。秒速2230メートルのレールガンを同じ条件で撃つと、照準距離は49.1キロメートルとなる。もし試験されたレールガンに水平線から15度の仰角を与えると、弾丸は253.4キロメートル飛ぶ。同じ発射条件で40ミリ高射砲の弾丸は37.1キロメートルしか飛ばない。これらは、火薬銃と同じ口径のレールガンの違いを示す単なる例である。
秒速3000~5000メートルの初速を持つ弾丸を発射できるレールガンを作れば、陸海空を問わず、どんな標的にも命中させることができる。速度を加えれば、どんな装甲も弾丸にとってはアルミホイルのようなものになる。
この武器はまだ実戦には使えない
しかし、発射に成功したからといって、艦隊の戦闘用武器になるわけではない。テストされたレールガンは実験モデルであり、軍艦の武装にはまったく適していないことが、すでに動画で示されている。彼らのレールガンが戦闘可能な海軍兵器になるまでには、まだまだ長い道のりがある。
第一に、連続射撃だ。航空機やミサイルに確実に命中させるためには、何発も撃つことが望ましい。しかし、レールガンでバースト射撃が可能かどうか、その発射速度はどの程度なのかは、まだ明らかになっていない。
第二に、消耗の問題である。映像では、火薬が装填されていないにもかかわらず、レールガンの銃口から炎が噴き出している。しかし、発射された弾丸は加速しながら砲身を伝わっていく。弾丸と砲身は相互摩擦によって金属が摩耗していく。発射薬と砲身の摩擦で発生した熱で加熱された最小の金属粉が空気中で発火した。銃の摩耗は従来の砲弾よりもはるかに激しいことが判明した。そのような一発一発が銃の命中精度に大きく影響する。何十発も撃てば、レールガンは強力に発射されるが、残念ながら非常に精度が落ちる。
第三に、電気的な安全性である。テストを行った人々は、レールガンを船上で発射するという重大なリスクを冒した。しかも、あえて穏やかな海と晴天の下で行った。なぜなら、波や塩水噴霧、雨や霧の中では、レールガンの電気系統の絶縁が破壊され、短絡やボルトアーク(電弧)、その他同様の現象を引き起こす可能性があるからだ。その結果、火災や船の損傷につながるかもしれない。
第四に、生存性である。電磁砲は、艦船自体に損傷が生じた場合と同様に、一定の損傷が生じた場合にも発射能力を保持しなければならない。「Bofors L60」高射砲は、船が沈没しても発射できることが、戦争における経験から知られている。浸水した砲弾庫(弾薬を貯蔵するために装備された船の区画)に潜って砲弾を取り出し、高射砲に装填すれば発射できる。このような状況下でレールガンが発射できるかどうかは重大な問題である。弾丸や砲弾で簡単に破壊され、船室に水が入っても発射できないのであれば、海戦には適さない。この問題は解決できるが、設計上の難しい問題である。
最後に5つ目、射撃管制である。レールガンを高射砲として位置づける場合、仰角90度までの円形発射を実現しなければならない。同時に大砲は回転、上昇、下降、つまりポインティングを素早く変更しなければならない。レールガンが実際に高射砲になるためには、複雑な戦闘用砲塔の開発が必要である。
総じて言えば、史上初めて海上でレールガンの発射に成功したことは評価できる。しかし、このレールガンは、軍艦に装備するのに適した海軍兵器となるには、まだ遠い道のりである。それがいつ実現するかは、推測の域を出ない。
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