イスラエル・パレスチナの紛争激化

【視点】米国、中東に防空戦力を派遣 専門家「その場しのぎの対応がエスカレーション招く」

米国防総省は、イスラエル・パレスチナ紛争の激化を背景に、中東地域の米軍拠点などに終末高高度防衛ミサイル(THAAD)や防空システムパトリオットなどを展開すると発表した。スプートニクは緊迫化する中東情勢をめぐる米国の動きについて、過去に米国防長官室で安全保障政策アナリストを務めたマイケル・マルーフ氏に話を聞いた。
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対空ミサイルを追加配備

ロイド・オースティン米国防長官は21日、中東にTHAADとパトリオットを追加で展開すると発表した。地域における米戦力の防衛力を強化するためとしている。また、「イスラエル防衛を支援することになる」とも加えている。
中東ではイスラエル・パレスチナの問題が周辺諸国に広まりつつある。イスラエルの報復攻撃はアラブ諸国の反感を招いただけでなく、レバノン南部のヒズボラやシリアの武装勢力などとイスラエル軍の小規模な撃ち合いも起きている。イスラエルがガザ地区への本格的な地上作戦を始めれば、同国は北部の「第2戦線」にも対応する必要が出てくる。
こうしたなか、ヒズボラやイラン、シリアのシーア派組織と繋がりが深いとされるイランをめぐる国際関係の緊張も高まっている。イスラエルとその後ろ盾となっている米国は、以前にも増してイランとの対立を深めている。
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イランへのメッセージ

マルーフ氏は、相次ぐシリア、イラクの民兵組織からの駐留米軍へのロケット弾やドローンによる攻撃は、米国とイランの緊張が高まっている証拠だと語る。そして、今回の対空防衛システムの追加配備は、米国からイランへのメッセージと位置づけた。

「こうした動きはバイデン米大統領がイスラエルのネタニヤフ首相に、米国がイスラエルを強く支援すると伝えるのと同時に起こっている。つまり、イランに『勝負が始まった』と伝えることは、何か重大な発展を意味するかもしれない」

マイケル・マルーフ
元米国防長官室・安全保障政策アナリスト

危険なエスカレーション

マルーフ氏は、米国の戦略の問題点は、過去の経緯の考慮や分析なしで目先の問題だけに反応しようとする、いわば「その場しのぎ」の対応にあるという。

「米国はなぜこうなっているかの全体像をみようとしない。彼らは知らないか、差し迫った脅威を前にそれを無視しているかのどちらかだ」

マイケル・マルーフ
元米国防長官室・安全保障政策アナリスト
中東の地理的条件も重要な要素だ。米軍はイランの周辺に35もの基地を持っている。ペルシャ湾を挟んで対岸のバーレーンには米第5艦隊の本部もある。対立する両勢力は物理的に非常に近い距離にあり、エスカレーションした際の飛び火のリスクも大きいということになる。
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混乱のなかで

マルーフ氏は「これはバイデン政権が推し進めてきたことで、ウクライナでも見た光景だ」と続ける。そして、メキシコからの不法移民問題を引き合いに出し、「米国は自分の国境ではなく、他国の国境を守るために対外戦争を行っている」と指摘する。
バイデン政権は1050億ドル(15.7兆円)の対外軍事支援予算を議会に要請している。これはウクライナとイスラエル向けの支援が大半となっている。しかし、34兆ドル近い債務の問題、予算審議をめぐる与野党対立など問題は山積みだ。しかも、解任されたマッカーシー前下院議長の後任が決まらず、議会は機能不全に陥り、政治的混迷が極まっている。

「米国はまさに混乱の真っ只中だ。債務が34兆ドルに達し、返す手段もない中で経済が混乱しているのは言うまでもない。バイデン政権は全体として、米国民のみならず、全世界に対して本当に『多くのこと』を与えてくれた」

マイケル・マルーフ
元米国防長官室・安全保障政策アナリスト
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